一般口演[ 疫学 ] 9:00~9:40

座長:自治医科大学公衆衛生学教室 中村 好一
コメンテーター:自治医科大学   柳川  洋

O-01 第22回川崎病全国調査成績 患者報告数、過去最高に!!

Results of the 22st nationwide survey on Kawasaki disease. The highest number of patients ever

1)自治医科大学公衆衛生学、2)宇都宮市保健所、3)日本川崎病研究センター

〇屋代 真弓1)、上原 里程2)、中村 好一1)、柳川 洋1)、川崎 富作3)

【目的】 最近2年間の川崎病の実態を明らかにする。
【方法】 2011年1月1日~2012年12月31日の2年間に小児科を標榜する100床以上の病院および小児科のみを標榜する100床未満の専門病院(2,006か所、うち23施設が廃院などで対象外となった)を受診した川崎病初診患者を対象に、第22回全国調査を実施した。調査内容には前回までの基本項目のほかに、転院情報、初回IG投与時のステロイド併用の有無、初診時検査所見(白血球数、血小板数、アルブミン、CRP)、心障害(初診時の異常)を追加した。
【結果】 6月17日現在の回収率は70.9%、2年間の患者報告数は26,586人と前回よりかなりの増加がみられ、2年間平均の罹患率は0-4歳人口10万対253と患者数とともに史上最高となっている。うち死亡例は4人(男4人、女0人)である。現在、未回答施設のうち、前回の報告患者が多いところへ往復はがきで照会中であり、最終ファイルの確定は7月末の予定。その後、集計・解析と報告書を作成し、学会当日は最終データを用い、詳細な結果を発表する予定である。
【考察】 今回の調査結果から、これまで経験のない未曾有の患者発生が推定される。この機会に、患者発生の地域・時間集積性、疫学要因の解明など、原点に返って川崎病の原因究明を目指す疫学研究および国際比較研究を推進することが喫緊の課題である。

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O-02 子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の進捗状況について

The Japan Environment and Children's Study(JECS) - current status of JECS

1)富山大学エコチル富山ユニットセンター、2)富山大学附属病院 小児科

〇浜崎 景1)、城川 美佳1)、田中 朋美1)、伊藤 実香1)、足立 雄一2)、稲寺 秀邦1)

【目的】 「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」が、平成22年度より全国15のユニットセンターで開始された。妊娠時および出生後の様々な環境要因が、子どもの健康や発育に及ぼす影響を明らかにするために、全国10万人を対象として行われる調査である。化学物質の曝露や生活環境が、胎児期から小児期にわたる子どもの健康にどのような影響を与えているのかについて明らかにし、化学物質等の適切なリスク管理体制の構築につなげることが目的である。この調査の一環として平成25年4月より川崎病についても疾患情報登録調査を行っている。今回はその進捗状況について述べるとともに、一部質問票調査の暫定的な集計を報告する。
【方法】 エコチル調査では、参加者のリクルートや質問票調査、生体試料の採取などは、全国15地域の各ユニットセンターが担当している。川崎病の疾患情報登録調査については、出生後6か月、1歳、1歳6か月の質問票に基づき、コアセンター(国立環境研究所)により川崎病の登録対象者が抽出され、各ユニットセンターに報告される。各ユニットセンターでは、さらにリストに基づき協力医療機関にてデータを収集し疾患情報登録調査を行っている。
【結果・考察】 当ユニットセンターでは平成23年2月からリクルートを開始し、平成25年6月28日の時点で、エコチル調査の参加登録者数が母親で4,145名、父親で2,030名、出生数は2,828名となっている。また、全国15地域の総数としては母親で74,139名、父親で34,484名、出生数で49,335名となっている。さらに、質問票調査の暫定的集計では、妊娠初期にたばこを「吸っている」と答えた妊婦は全体の5%で、25歳未満に限ると10%と特に高かった。

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O-03 川崎病ガンマグロブリン不応例の地域集積性について

Analysis of regional clustering in resistance to intravenous immunoglobulin therapy for Kawasaki disease

1)和歌山県立医科大学 小児科、2)社会保険紀南病院 小児科、3)橋本市民病院

〇末永 智浩1)、鈴木 啓之1)、垣本 信幸1)、佐藤 匡1)、武内 崇1)、吉川 徳茂1)、渋田 昌一2)、大石 興3)、飯島 文憲3)

【緒言】 我々は第31回の本会において川崎病ガンマグロブリン(以下IVIG)不応例の時間集積性について報告した。今回我々は、IVIG不応例の地域集積性を示唆する、短期間の一施設における不応例の集中を経験した。この事象について考察を加えて報告する。
【対象・方法】 検討した地域は和歌山県北東端の橋本市周辺で、対象は2013年1月から3月の3か月間に橋本市民病院(以下H病院)で加療した川崎病9症例。和歌山県北東部と隣接する奈良県南西部で川崎病を治療可能なのはH病院のみで、当該地域の症例はほぼこの施設に集まる。これらの9症例を、2010~2012年の3年間におけるH病院の川崎病症例と比較した。
【結果】 対象9症例のプロフィールは男児7例・女児2例で、年齢は8か月~4歳9か月で中央値は3歳3か月、再発が1例。9例中6例(66.7%)が初回IVIG(2g/㎏)投与終了24時間後に解熱が得られず、不応と判定された。IVIGは全て同一製剤で9例に対し異なる8種のロットが使用され、不応例はうち6種のロットが使用されていた。全例追加IVIGで解熱し、心合併症なし。なお、当該地域の総人口は約13万人、小児人口は約1万5千人であるが、2010~2012年の各1年間の川崎病症例数はそれぞれ7例・2例・7例でIVIG不応はそれぞれ1例・1例・なしであった。当該地域のサーベイランスからは特に注目すべき感染症の流行は見出せなかった。また当該地域に隣接する那賀医療圏において当該期間の川崎病の発症はゼロであった。
【結論】 過去3年間の症例数との比較から、また隣接医療圏との比較から、当該期間の当該地域において川崎病IVIG不応例の発生が多発していたことが明らかになった。またIVIGのロットは一定しておらず、不応とロットの関連性は否定的であった。今回の事象の原因は不明であるが、川崎病の病因論と関連する可能性も考えられる。

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O-04 最近10年の巨大冠動脈瘤の全国実態調査における心筋梗塞症例の検討

National Survey of Kawasaki Disease with Giant Aneurism in Recent 10 Years:Analysis of myocardial infarction

1)日本医科大学 小児科、2)京都府立医科大学大学院医学研究科 小児循環器・腎臓学、 3)東邦大学医療センター大森病院小児科、4)自治医科大学公衆衛生学、 5)国立成育医療研究センター循環器科、6)和歌山県立医科大学付属病院小児科、 7)国立循環器病研究センター病院小児循環器科、8)日本大学医学部小児科、 9)東京都立小児総合医療センター循環器科、 10)Division of Clinical Pharmacology and Toxicology, The Hospital for Sick Children, Toronto, Canada、11)国立成育医療研究センター免疫アレルギー研究部

〇池上 英1)、深澤 隆治1)、濱岡 建城2)、佐地 勉3)、中村 好一4)、賀藤 均5)、鈴木 啓之6)、 津田 悦子7)、鮎澤 衛8)、三浦 大9)、小林 徹10)、松裏 裕行3)、屋代 真弓4)、阿部 淳11)、 小川 俊一1)

【目的】 最近10年間の川崎病巨大冠動脈瘤の全国調査より明らかになった心筋梗塞症例の詳細を検討する。
【方法】 第16~21回(1999~2010年)の川崎病全国調査で巨大冠動脈瘤の報告があった施設にアンケート用紙を送付、回収した。症例が転院した場合には、転院先にもアンケートを送付した。
【結果】 全国275施設の415例に対してアンケートを送付、このうち334例(80.5%)から回答があった。このうち、巨大瘤とは言えない例84例、重複例36例を除く214例について解析した。最終転帰は176例がフォロー中、死亡が13例、ドロップアウト11例、最終転院先からの回答なし14例であった。
 心筋梗塞(以下AMI)は項目に記載があった202例中32例(15.8%)に報告された。初回のAMIは川崎病発症数か月以内に起こすことが多く、中央値は5か月(0-85か月)であった。梗塞回数は1回が26例、2回が6例であった。初回の画像評価で項目に記載があった191例中22例(11.5%)に血栓が認められ、そのうち10例(45.5%)の症例でAMIが見られ、4例(18.2%)がAMIにて死亡した。これら10例の発症からAMIまでの期間は短く、中央値1ヶ月(0-17ヶ月)であった。また初回・最終を含めて、画像評価で項目に記載があった196例中66例(33.7%)に血栓が認められ、そのうち26例(39.4%)の症例でAMIが見られ、5例(7.6%)がAMIにて死亡した。これら26例のうち、項目に記載があった25例について発症からAMIまでの期間は中央値5ヶ月(0-46ヶ月)であった。
 結果的に画像上血栓の記載のないAMIは6例で、そのうち1例が死亡した。
【考察】 川崎病巨大冠動脈瘤症例の心筋梗塞は川崎病発症早期に多く、特に画像検査上血栓を認めるものは注意が必要と思われた。

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一般口演[ 病理 ] 9:45~10:25

座長:東邦大学医療センター大橋病院 病理診断科 高橋  啓
コメンテーター:東邦大学            直江 史郎

O-05 長期経過観察した川崎病既往患者の成人期剖検例

Pathologic findings of Kawasaki disease whose accepted long term follow-up

東京慈恵会医科大学 小児科

〇藤原 優子、浦島 崇

【背景】 成人期に達した川崎病既往患者は10万人を超える。しかし、冠動脈病変を長期経過観察した剖検は少ない。
【臨床経過】 剖検時31歳。5ヶ月(1981年)と1歳5か月(1982年)に川崎病に罹患した。
 初回4/6項目、aspirin, dipyridamolで治療、浅井・草川のスコア8点、解熱病日不明、13病日に左右冠動脈瘤となり、発症2カ月時のカテにより左右冠動脈瘤、左回旋枝狭窄と診断しaspirinを継続した。
 2回目の川崎病は4/6項目、浅井・草川のスコア4点、aspirinからflurbiprofenで治療し11病日に解熱した。冠動脈は一過性変化を認めた。  2歳時に2回目のカテを実施し、右冠動脈病変は改善、LAD拡張は改善するが狭窄所見を呈した。
 6歳時の心エコーで冠動脈病変は改善と診断した。
 8歳時のカテでは、左冠動脈拡張と診断し内服は継続とした。
 12歳時のカテでは、LAD拡張と狭窄と診断した。またCTでLADの石灰化を認めた。
 21歳時発熱とCRPの上昇を認め、慢性活動性EBウイルス感染症と診断した。
 31歳時、慢性活動性EBウイルス感染症が悪化、抗生剤・IVIG・免疫抑制療法で加療、臍帯血移植待機中に肝機能が悪化し死亡した。死亡1週間前の心エコー所見で左室収縮・拡張能は維持、左冠動脈の輝度亢進所見を認めた。経過中高脂血症の所見はない。生後5ヶ月から抗血小板療法を継続していた。
【剖検所見】
1. 左冠動脈前下行枝の分岐部より1 ㎝の部位に認める軽度瘤状拡張:中膜の部分的な高度菲薄化、石灰化を伴う内膜の高度肥厚と軽微な炎症細胞浸潤。
2. 左冠動脈回旋枝と右冠動脈の主として中膜内側平滑筋の顕著な現症と内膜の線維性肥厚。
3. 大動脈に動脈硬化性病変は認めなかった。
【結論】 長期に経過観察しえた抗血小板療法中の川崎病既往患者の剖検を経験した。冠動脈所見は急性期臨床経過と合致する所見であった。最終エコー所見と剖検所見の差異があり、臨床経過とCT検査により将来起こりうる危険性を鑑み、内服治療の決定をすべきである。

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O-06 急性期川崎病心筋炎におけるテネイシンCの発現

Expression of Tenascin-C in myocarditis in acute-phase Kawasaki disease

1)東邦大学医療センター大橋病院 病理診断科、2)順天堂大学小児科、 3)三重大学大学院医学系研究科 修復再生病理学

〇横内 幸1)、大原関 利章1)、勝碕 譲児1)、原田 真菜2)、今中 恭子3)、高橋 啓1)

【目的】 テネイシンC(TN-C)は、炎症やそれに続く組織リモデリングに関与する細胞外マトリクスであり、心臓では心筋梗塞、心筋炎、拡張型心筋症などの病的状態で発現するとされている。急性心筋炎では、発症1週間以内の症例では間質にTN-Cの強い発現があり、発現の強さは炎症の強さに相関すること、炎症の沈静化に伴って漸減することが明らかとなっている。我々は、急性期川崎病の心筋炎におけるTN-Cの発現について検討した。
【対象】 急性期川崎病13剖検例(年齢:3か月~5歳2か月、性別:男9例、女4例、病日:6~38日)。
【方法】 症例ごとに心筋炎の程度と炎症細胞の種類を評価した。炎症細胞の種類はCD66およびCD68免疫染色標本を用いて好中球および単球/マクロファージを同定した。その後、TN-Cの免疫染色を施行して心筋におけるTN-C発現の有無、局在および染色強度を評価し、TN-C発現の局在、強度が心筋炎の程度や炎症細胞の種類によって異なるかを検討した。
【結果】
①心筋炎が高度な症例は4例で、7例は軽度であった。残り2例は心筋梗塞合併例であった。心筋炎の程度が高度な症例では、TN-Cの発現は強く、かつ広範囲に認められる傾向にあった。これに対し、心筋炎の程度が軽度あるいは限局性の場合は、炎症部位に一致した発現を示し、染色強度も弱くなる傾向にあった。心筋梗塞合併例では、梗塞部位にTN-Cの強い発現を認めた。
②CD68+マクロファージ浸潤が優位な領域にTN-Cが強く発現する傾向がみられたが、CD66+好中球優位の症例においてもTN-Cの発現は強く認められた。
【考察】 急性期川崎病心筋炎におけるTN-C発現は、炎症細胞の種類によらず、炎症の程度と関連すると考えられた。

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O-07 急性期川崎病冠状動脈炎におけるテネイシンCの発現

Expression of Tenascin-C in coronary arteritis in acute-phase Kawasaki disease

1)東邦大学医療センター大橋病院 病理診断科、2)順天堂大学 小児科、 3)三重大学大学院医学系研究科 修復再生病理学

〇高橋 啓1)、横内 幸1)、大原関 利章1)、勝碕 譲児1)、原田 真菜2)、今中 恭子3)

【背景】 急性期川崎病における冠状動脈炎は、内膜および外膜から炎症細胞浸潤が始まり、10病日頃汎血管炎に至る。その後、強い炎症細胞浸潤が血管全周に及び、血管壁が破壊され動脈瘤を形成するようになるが、40病日頃には炎症細胞浸潤が消退するとされている。このような経時的変化を示す冠状動脈炎において、炎症やそれに続く組織リモデリングに関与するテネイシンC(TN-C)がどのような発現を示すか検討した。
【対象】 急性期川崎病13剖検例(年齢:3か月~5歳2か月、性別:男9例、女4例、病日:6~38日)。
【方法】 抗TN-C抗体を用いた免疫染色を施行し冠状動脈におけるTN-C発現の有無、強度、局在を評価し、HE標本における炎症細胞浸潤の程度や局在と比較検討した。また、TN-C発現の経時的変化をみた。
【結果・考察】 血管炎の存在する冠状動脈では全例でTN-Cの発現が認められ、発現強度は炎症の程度と相関した。経時的な検討では、18~20病日を境にTN-C発現の局在に差が認められた。すなわち10~18病日例では、血管壁に加えて冠状動脈周囲の結合組織に強い浮腫性変化と炎症細胞浸潤が認められ、この領域に一致したTN-Cの発現をみた。これに対し、20~38病日例では動脈周囲結合組織にマクロファージ主体の炎症細胞浸潤が残存する場合でも、TN-Cの発現は血管壁の内膜~中膜に限局し、動脈周囲結合織のTN-C発現はほとんど認められなくなった。血管炎を伴わない動脈においてはTN-Cの発現はみられなかった。
 急性期川崎病の冠状動脈炎ではTN-Cの発現が認められるが、20病日を過ぎると血管周囲のTN-Cの発現が減弱することが明らかとなった。
 40病日以降の症例の冠状動脈変化についても検討し、報告したい。

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O-08 川崎病患者のFFPE肺組織を用いたメタゲノム解析

Metagenomic Analysis of Formalin-Fixed Paraffin-Embedded Lung Tissues in Kawasaki Disease

1)国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー研究部、 2)国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター、 3)国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部、4)東邦大学医療センター大橋病院病理診断科

〇阿部 淳1)、黒田 誠2)、中林 一彦3)、高橋 啓4)

【目的】 川崎病患者の肺の気道上皮細胞に、RNAウイルス様の細胞質内封入体が存在することが報告された(Rowley et al, 2005)。しかし、これが真にウイルスに由来するものなのか、未だ結論は得られていない。次世代シークエンサーを用いて剖検肺組織のメタゲノム解析を行い、既知のウイルスゲノムに相同な配列を検索した。
【方法】 ホルマリン固定パラフィン包埋された(FFPE)肺の組織切片から核酸を抽出してDNAライブラリーを作製し、次世代シークエンサーIllumina MiSeqを用いて塩基配列を決定した。得られた配列(リード)のうちヒト由来と考えられるものを除外した後、nt-databaseに対して相同性検索をし、Metagenome Analyzer(MEGAN) -4ソフトウェアを用いてメタゲノム解析を行った。
【結果】 川崎病患者5名、対照患者5名の剖検肺組織から得られた総リード数の中央値は、川崎病患者が7,551,532本、対照患者が6,343,374本だった。このうち非ヒト配列として相同性検索したリードの中央値は各々、2,402,598本(18~75%)、3,465,892本(8~55%)だった。陽性コントロールとして添加した細菌ファージ(Microvirus)のリードを除いたウイルスゲノムのリード数は川崎病群が444~4,089本、対照群が282~10,556本だった。非ヒト配列リード総数に対するウイルスゲノムのリード数の比率は、川崎病群が0.02~0.08%、対照群が0.01~0.30%で有意差はみられなかった。川崎病群あるいは対照群に特異的なウイルス由来のリードは認められなかった。
【考察】 川崎病患者のFFPE肺組織のメタゲノム解析を行ったが、特定のウイルス相同配列は検出できなかった。最終的な結論を得るためには、FFPE組織によらないライブラリーの作製とメタゲノム解析法の改良が必要と考えられる。

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一般口演[ 病因、基礎研究 ] 10:30~11:20

座長:順天堂大学医学部附属浦安病院 小児科 松原 知代
千葉大学大学院医学研究院 公衆衛生学 尾内 善広

O-09 川崎病の病態形成における抗酸化酵素Peroxiredoxin2の機能的役割の解明

Pathological roles of the anti-oxidative enzyme peroxiredoxin2 in patients with Kawasaki disease

1)聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター、2)高知大学医学部 小児思春期医学、 3)国立病院機構 金沢医療センター 小児科

〇唐澤 里江1)、佐藤 淑子1)、玉置 真弓1)、藤枝 幹也2)、太田 和秀3)、遊道 和雄1)

【目的】 我々はプロテオミクスを用いて血管炎に高頻度に検出される抗血管内皮細胞抗体の対応抗原として、抗酸化酵素のPeroxiredoxin2(Prx2)を同定し、IgG-Prx2抗体は未治療の川崎病患者の60%に検出され、対照小児では検出されなかったことをすでに報告した。Peroxiredoxinsは細胞内では細胞保護に関与する一方で、細胞外への放出は炎症の引き金となることが脳梗塞のマウスで報告されており、今回IgG-Prx2抗体およびPrx2蛋白の川崎病の病態形成における臨床的意義について検討した。
【方法】 大動脈血管内皮細胞を用いたwhole- cell ELISAにて接着分子発現およびサイトカイン産生を評価した。Toll-like receptor(TLR)を特異的に阻害するTLRインヒビターペプチドを用いて、Prx2の機能解析をおこなった。
【結果】 抗Prx2抗体は血管内皮細胞から各種の炎症性サイトカインの分泌や接着分子の発現を誘導し、産生されるサイトカインの種類およびサイトカイン量は血管内皮細胞の種類によって異なっていた。同様にPrx2蛋白で血管内皮細胞を刺激することで炎症性サイトカインの分泌および接着分子の発現が亢進し、これらの作用は抗Prx2抗体の共存下で増強され、TLRの阻害で減弱されることが示された。
【考察】 抗Prx2抗体が血管内皮細胞上のPrx2蛋白と結合し、さらに細胞外へ放出されたPrx2がTLRに結合することで、接着分子の発現および炎症性サイトカインの産生が誘導されて血管内皮細胞傷害に関与していることが示唆された。さらに細胞外へ放出されたPrx2がB細胞上のTLRを介して抗Prx2抗体の産生を誘導している可能性も考えられた。

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O-10 急性期川崎病患児の末梢血単球/マクロファージにおけるCD163発現に関する検討

CD14+CD163+ monocyte subpopulation in children with Kawasaki disease

山口大学大学院医学系研究科 小児科学分野

〇岡田 清吾、鈴木 康夫、東 良紘、井上 裕文、高原 みどり、長谷川 俊史

【目的】 CD163は単球/マクロファージに発現し、ヘモグロビン・ハプトグロビン複合体に対する高親和性スカベンジャーレセプターである。Tumor necrosis factor-αやLipopolysaccharideなどの炎症性刺激は可溶性CD163(sCD163)の放出を誘導し、sCD163は活性化単球/マクロファージのマーカーとしての有用性が報告されている。わたしたちは昨年の本学会において急性期川崎病患児で血清中sCD163が有意に上昇していることを報告し、川崎病急性期の病態における末梢血単球/マクロファージの活性化の関与を改めて証明した。本研究ではさらなる病態解明のため、末梢血単球/マクロファージ細胞表面上のCD163分子の発現に関して検討した。
【方法】 対象は2012年8月から2013年3月までに当院小児科に入院した川崎病患児13例(男児9例、女児4例、年齢0歳5か月~10歳10か月、中央値3歳0か月)。末梢血を用い、フローサイトメトリー法でCD14+単球/マクロファージにおけるCD14+CD163+単球/マクロファージの割合(CD14+CD163+単球/マクロファージ比)を測定し、正常対照群16例(男児13例、女児3例、年齢0歳6か月~5歳11か月、中央値3歳2か月)と比較検討した。
【結果】 川崎病急性期におけるCD14+CD163+単球/マクロファージ比は正常対照群に比し有意に低値だった(28% vs. 52%. p=0.0038)。また急性期は回復期に比し有意に低値だった(28% vs. 50%. p=0.016)。回復期と正常対照群間に有意差はみとめなかった。ガンマグロブリン大量療法(IVIG)奏効群とIVIG不応群間に有意差はみとめなかった。
【考察】 急性期川崎病患児におけるsCD163の上昇は、活性化した単球/マクロファージの細胞表面上のCD163が血中に放出された結果と考えた。IVIG不応例では単球/マクロファージ活性化以外の機序も病態形成に関与している可能性が示唆された。

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O-11 川崎病発症進展機序におけるMannose binding lectin(MBL)の関与 川崎病動物モデルを用いた解析

Roles of mannose binding lectin(MBL)in the pathogenesis of Kawasaki disease

1)京都府立医科大学 小児循環器腎臓学講座、2)京都府立医科大学循環器腎臓学講座、 3)東京薬科大学薬学部免疫学教室、4)東京都医学総合研究所認知症高次脳機能研究部門

〇中村 明宏1)、沖垣 光彦2)、鈴木 千夏1)、三浦 典子3)、亀谷 富由樹4)、大野 尚仁3)、 浜岡 建城1)

【目的】 川崎病の発症機序について、感染刺激に伴う免疫応答の制御異常の関連が議論されている。このうち、川崎患児を対象とした遺伝学的解析から、微生物に対するパタン認識蛋白質のひとつとして知られるmannose bining lectin(MBL)と川崎病病態との関連は以前よりしばしば指摘されてきた。今回、私たちは川崎病発症機序におけるMBLの役割を、動物モデルを用いて分子レベルで明らかにすることを試みた。

【方法】 川崎病マウスモデルはカンジダ細胞壁水溶性画分(CAWS)を用いて大野、三浦らの方法に準じて作成した。MBL標的蛋白質はFar-western blottingおよびproteomicsの手法により同定した。

【結果】 本マウスモデルを用いた解析から以下の知見を得た。すなわち、

(1) 血管炎好発部位である大動脈起始部へのMBL-A, MBL-Cおよび補体成分C3/C3b/C3dの沈着を認めた。

(2) MBL-Aおよび-Cの認識する主要な内在性蛋白質としてヒストンH4, H2B, H2A, H3を同定した。

(3) これらMBLとヒストンとの結合はマンナン存在下で阻害された。

(4) in vitro assayにおいて、Histoneはレクチン経路を活性化した。

【考察】 これらの結果は、MBLが、細胞死などに伴い細胞外に放出されたクロマチン成分などを認識して補体経路を活性化し、マウスに川崎病様血管炎の進展増悪に関与していることを示唆する。

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O-12 治療抵抗性川崎病に対するシクロスポリンA療法時の免疫担当細胞のNFAT経路、JAK-STAT経路の関与についての検討

NFAT pathway and JAK-STAT pathway during cyclosporin A treatment for immunoglobulin-resistant Kawasaki disease

1)和歌山県立医科大学 小児科、2)社会保険紀南病院 小児科、 3)国立成育医療研究センター研究所・免疫アレルギー研究部

〇垣本 信幸1)、鈴木 啓之1)、佐藤 匡1)、末永 智浩1)、武内 崇1)、澁田 昌一2)、阿部 淳3)、吉川 徳茂1)

【背景】 当院では川崎病(KD)急性期に、2回のガンマグロブリン(IVIG)無効例にシクロスポリンA(CsA)を投与し効果を得ている。CsAはNuclear factor of activated T-cells(NFAT)経路の活性を抑制するが、投与時の免疫応答について未解明な点が多く残っている。

【目的と方法】 NFAT経路と炎症性サイトカインシグナル伝達経路であるJAK-STAT経路の関与を明らかにするために、2012年4月から2013年6月の間に、CsA投与例(CsA群、n=7)、初回IVIG奏功例(1st群、n=8)、追加IVIG奏功例(2nd群、n=5)のKD急性期の末梢血を得た。フローサイトメトリー(FCM)でphospho Signal Transducer and Activator of Transcription(pSTAT)3, 5の平均蛍光強度(MFI)の計測を行った。同時にRNAを採取し細胞内シグナル伝達物質等の遺伝子発現量を計測した。

【結果】 CsA群で、CsA投与後にNFATc2が上昇し、FCMでpSTAT3(CD16b+)のMFIが低下した。1st群で、IVIG投与後にSTAT3の遺伝子発現量が低下し、NFATc1, NFATc2が上昇した。FCMでpSTAT3(CD3+, CD16b+)のMFIが低下し、pSTAT5(CD16b+)のMFIが上昇した。1st群と2nd群の比較では、初回IVIG投与後、1st群でSTAT3発現量が低値、NFATc1発現量が高値であった。

【まとめ】 CsA、IVIG共に治療に反応した場合、遺伝子発現量に関して、STAT3等が低下、NFATc1, NFATc2が上昇し、FCMでpSTAT3のMFIの低下、pSTAT5の上昇傾向を認めた。KD急性期治療中の免疫応答にNFAT経路、JAK-STAT経路の関与が示唆された。

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O-13 JNK抑制による川崎病冠動脈瘤予防薬の開発 ~汎血管炎モデルマウスを用いた検討~

C-Jun N-terminal kinase inhibitor prevents vascular lesion of Kawasaki vasculitis mouse model

1)福岡大学医学部 小児科、2)福岡大学薬学部薬学疾患管理学、3)福岡歯科大学感染生物学、 4)山口大学器官病態外科学、5)三重大学修復再生病理学、6)久留米循環器病研究所

〇吉兼 由佳子1)、古賀 允久2)、長 環3)、吉村 耕一4)、今中 恭子5)、橋本 淳一1)、上田 誠1)、 山本 由美子4)、青木 浩樹6)、廣瀬 伸一1)

【背景】 川崎病患児数は年々増え、巨大瘤を形成する例が依然として見られる。川崎病患児の予後向上のためには、冠動脈瘤形成の進行防止を目指した画期的な薬物治療の開発が急務である。一方、大動脈瘤は血管炎症が主病態と言われ、瘤組織におけるc-Jun N-terminal kinase(JNK)活性の関与とJNK阻害療法の有効性が示唆されている。そこで川崎病の血管炎病態でもJNKが有力な治療標的候補と考えた。また動脈瘤形成の新たなバイオマーカーとしてリモデリングに関与するテネイシンC(TnC)に着目し、JNK阻害療法の治療効果を検証した。

【目的】 川崎病類似汎血管炎モデルマウスを用い、川崎病の血管炎病態においてJNK阻害薬が血管瘤形成を抑制することを証明する。

【方法】 カンジダ・アルビカンス標準株の菌体抽出物質4 ㎎を、マウスC57BL/6雄の腹腔内に5日間連続投与を1週目と5週目の2クール行い、川崎病類似汎血管炎モデルマウスを作成した。またカンジダ投与開始前日にJNK阻害薬徐放剤SP600125(30 ㎎/㎏/day)をマウス皮下に留置した。モデルマウス作成2ヶ月後に犠牲死させ、血管病変を解析した。以上をJNK阻害薬投与群(J群)とし、J群10匹とプラセボ群(プ群)20匹とで比較検討した。

【結果】 プ群では20匹中に13例(65%)で肉眼的瘤病変を認めたのに対し、J群では10匹中に1匹(10%)のみで(p<0.01)、形成された瘤の直径も有意に小さかった。さらに組織所見ではプ群では血管周囲結合組織から血管壁全層にマクロファージをふくむ強い炎症細胞浸潤、弾性線維の断裂、破壊がみられた。一方J群では中膜平滑筋層にTnC発現がみられたが、炎症細胞浸潤、弾性線維の破壊は軽度であった。

【結語】 JNK阻害薬は川崎病汎血管炎を抑制し、瘤形成予防薬となりうる事が示唆された。

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会長要望演題[ トランスレーショナルリサーチ ] 11:25~12:25

座長:九州大学大学院医学研究院 成長発達医学分野(小児科     原 寿郎
横浜市立大学附属市民総合医療センター 小児総合医療センター 森 雅亮

O-14 川崎病におけるImmunoglobulin Gシアル化修飾と臨床特性

IgG sialylation and treatment response in patients with Kawasaki disease

1)Department of Pediatrics, University of California San Diego, School of Medicine, 2)Rady Children's Hospital San Diego, 3)Department of Cellular and Molecular Medicine, Glycobiology Research and Training Center, University of San Diego, School of Medicine, 4)Division of Human Genetics, Genome Institute of Singapore

〇Shohei Ogata1)、Chisato Shimizu1)、Alessandra Franco1)、John T. Kanegaye2)、 Biswa Choudhury3)、Ling Ling4)、Martin L. Hibberd4)、Ajit Varki3)、Jane C. Burns1)2)、 Adriana H. Tremoulet1)2)

【方法】 Rady Children's Hospital San DiegoでIVIG療法を受けた川崎病20例(IVIG反応10例、不応10例)、コントロールとして自然寛解型ウィルス感染患者10例、健常児10例を対象とした。IVIG投与前、治療終了1年後の血清、および各患者に投与されたIVIG製剤からIgGを抽出し、IgG糖鎖構造を解析した。全血中ST6GAL1 mRNA発現は2つMicroarray platforms(Illmina:IVIG反応110例、不応30例;Affymetrix:IVIG反応6例、不応6例)を用いて解析し、RT-PCRで再現性を確認した。独立コーホート川崎病20例(IVIG反応:10例、不応:10例)の血漿中可溶性ST6GAL1蛋白量をELAISAを用いて解析した。

【結果】 IVIG不応例の内因性IgGシアル酸量は反応例と比較して急性期、治療1年後いづれも有意に低値を示した(急性期:p=0.001, 1年後:p=0.008)。Microarray解析でIVIG不応例のST6GAL1 mRNA発現は反応例と比較し有意に低値を示し(急性期p=0.002-0.009、回復期p=0.004-0.015)、RT-PCRで再現性を認めた(急性期、1年後ともにp<0.001)。独立コホート川崎病例の急性期血漿中可溶性ST6GAL1量はIVIG不応例において有意に低値でだった(p=0.020)。

【考察】 IgGシアル化はFc受容体親和性と抗炎症シグナル伝達に関与している。本研究ではIVIG不応例の内因性シアル化IgG量およびST6GAL1発現は急性期、回復期ともに一貫して低値を示した。これらの結果は治療反応間のシアル化能に差があり、不応例の重要な因子の一つである可能性を示唆した。今後、IVIG不応例のシアル化関連遺伝子の解明、血漿ST6GAL1蛋白量の臨床的有用性の解析が必要である。

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O-15 川崎病性冠動脈瘤形成におけるGalectin-3と Transforming Growth Factor-β経路の関与

Galectin-3 and TGF-βSignaling in the Pathogenesis of Coronary Artery Aneurysms in Kawasaki Disease.

1)University of California, San Diego School of Medicine, Departments of Pediatrics 、 2)University of California, San Diego School of Medicine, Departments of Medicine

〇沼野 藤人1)、Matthew Vejar2)、Chisato Shimizu 1)、Susan Jimenez-Fernandez1)、 Adriana H. Tremoulet 1)、Jane C. Burns1)、Lori B. Daniels2)

【背景】 これまでに我々はTransforming Growth Factor-β(以下TGF-β)シグナル伝達経路が冠動脈瘤形成に大きく関わることを示した。Galectin-3(以下Gal-3)は、心事故に関連した新たな心筋繊維化のマーカーであるが、TGF-β経路を介して組織炎症と繊維形成に関わっている。しかしながら、川崎病性冠動脈瘤形成との関連を検討した報告はない。

【方法】 成人川崎病既往例(以下AKD)69人と、小児急性期川崎病症例(以下PKD)12人の血漿Gal-3値をELISA法で測定した。AKD症例はカルテを後方視的に検索し、既往中の造影CTもしくは冠動脈造影における冠動脈最大径によって冠動脈瘤群と正常群に分類した。PKD症例は経胸壁心エコーで測定した冠動脈最大径のZ-scoreによって冠動脈瘤群と正常群に分類した。統計的解析はKruskal-Wallis testを用い、p<0.05を有意差ありとした。

【結果】 AKD正常群(n=58)のGal-3値は中央値10.0ng/㎖であり、AKD冠動脈瘤群(14.9ng/㎖, n=11)、PKD冠動脈瘤群(18.1ng/㎖, n=8)、PKD正常群(14.4ng/㎖, n=4)、に比べて有意に低値であった(p=0.0006)。Gal-3値はAKD症例よりPKD症例で、正常群より冠動脈瘤群で高い傾向にあった。

【考察】 Gal-3はTGF-βシグナルの増加を介して、Epithelial-Mesenchymal Transition(以下EMT)を導く。さらに、分泌型Gal-3は細胞外器質タンパクに結合し、炎症を促進させる細胞接着分子としての働きも持ち、冠動脈瘤形成に関与するものと思われる。しかし、Gal-3の上昇が冠動脈瘤形成を引き起こす原因になるかどうかは不明である。現在さらなるPKD症例のGal-3測定を進め、動脈瘤頻度のGal-3濃度依存性について検討をすすめている。

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O-16 iPS細胞技術を用いたガンマグロブリン不応川崎病の病態解明

Analysis of the mechanisms of intravenous immunoglobulin-resistant Kawasaki disease using iPSCs technique

1)京都府立医科大学大学院医学研究科 小児循環器・腎臓学、2)京都大学iPS細胞研究所

〇池田 和幸1)2)、天久 朝廷2)、松井 敏2)、八幡 倫代1)、岡本 亜希子1)、鈴木 千夏1)、 長船 健二2)、濱岡 建城1)

【目的】 疾患特異的iPS細胞を用いて試験管内で病態を模倣する系を作製し、病態解析や治療薬の探索を行う「疾患モデル作製研究」が盛んに行われている。本研究は、ガンマグロブリン療法(IVIG)反応および不応川崎病患者からiPS細胞を樹立し、川崎病の病態を模倣する新規試験管内疾患モデルの確立とそれを用いたIVIG不応の機序解明を目的とする。

【方法】 対象はIVIG反応例2例(ともに16歳女性)、IVIG不応例2例(12、14歳男性)。患者由来の皮膚線維芽細胞(n=3)または末梢血T細胞(n=1)にエピソーマルベクターを用いて初期化因子(OCT3/4, SOX2, KLF4, L-MYC, LIN28, p53 shRNAの6因子)を導入しiPS細胞を作製した。作製したiPS細胞株の評価は(1)導入因子のゲノムintegrationの確認、(2)OCT3/4やNANOGなどの未分化マーカーの発現、(3)胚様体及び奇形腫形成法による三胚葉への分化能の評価、(4)血管内皮細胞及び単球への分化誘導効率、(5)核型解析により行った。樹立したiPS細胞から血管内皮細胞及び単球への分化誘導は既報のプロトコールを用いた。

【結果】 川崎病患者4例から皮膚組織または末梢血を採取し、iPS細胞を樹立した。川崎病患者由来iPS細胞は、ヒトES細胞と同様の遺伝子発現と三胚葉への多分化能を有し、さらに川崎病の病態形成に重要な役割を果たす血管内皮細胞および単球にin vitroで分化誘導可能であった。作製された単球の機能解析を行ったところ、生体内の単球と同様のサイトカイン産生能を示した。現在、マイクロアレイを用いて患者由来iPS細胞から誘導した血管内皮細胞の遺伝子発現解析を行っており、本発表においては解析結果についても提示したい。

【考察】 川崎病患者の体細胞からiPS細胞の樹立が可能であった。さらに、患者由来iPS細胞から血管内皮細胞および単球への分化誘導が可能であった。今後、作製された血管内皮細胞および単球を用いて、共培養実験系を用いたIVIG不応関連分子の探索を行う方針である。

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O-17 IVIG+アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)併用は川崎病モデルマウスの 冠動脈炎を著明に抑制する

IVIG plus ARB significantly attenuated Coronary Arteritis in a murine model of Kawasaki disease.

東海大学医学部専門診療学系 小児科学

〇菅沼 栄介、松田 晋一、中村 英明、関根 佳織、鵜川 寿子、新村 文男、望月 博之

【目的】 近年我々は、ARB(アンギオテンシン受容体拮抗薬)が川崎病モデルマウスにおける冠動脈炎の抑制効果を持つ事を示した(日本小児循環器学会雑誌28:5, 2012)。今回川崎病に対する治療の1st lineであるIVIGにアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を併用することが冠動脈病変に与える影響を検討した。

【方法】 4週令のC57/BL6雄マウスにLCWE(Lactobacillus casei wall cell extract)を300 ㎍(n=5)またはPBS(n=5)を腹腔内投与した群、さらにLCWE投与後にIVIG(ヴェノグロブリンIHⓇ・1g/㎏、日本血液製剤機構)を5日目に静脈内投与した群(n=8)、ARB(ロサルタンⓇ、万有製薬)100 ㎎/Lを連日経口投与した群(n=8)、さらにIVIG+ARBを併用した群(n=9)の計5群を作製し2週後に冠動脈周囲の組織学的観察(HE染色)を行った。血管炎の程度はスコアリング方法を用いた半定量的な解析を行った。さらにCytometric Bead Array(CBA, BDTM)により血清サイトカインの検討も行った。

【結果】 冠動脈炎スコアは、PBS群で2.2±0.7、LCWE群で7.0±0.9とLCWE投与による冠動脈炎の惹起が確認された。IVIG群では6.0±0.9、ARB群では4.4±0.8と単独投与による冠動脈炎抑制の傾向がみられ、IVIG+ARB併用群では3.2±0.6と、さらなる抑制が確認された。冠動脈周囲、大動脈壁のF4/80陽性マクロファージはIVIG群、ARB群、IVIG+ARB併用群の全てで同程度の抑制を見た。さらに血清サイトカイン測定では、LCWEにより上昇したIFN-γ、IL-1β、IL-6のうちIVIG投与によりIL-1βのみ若干の抑制をみた。LCWE+ARB併用によりIL-1βの低下のみならずIFN-γ、IL-6を有意に抑制した。

【考察】 川崎病モデルマウスにおいてIVIG+ARB併用は、血清サイトカインを強く抑制することで冠動脈炎を著明に縮小した。今後、IVIG+ARB併用療法が急性期川崎病に対する治療選択の一つとなることが期待される。

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O-18 ORAI1遺伝子の多型と川崎病との関連

Variations in ORAI1 gene associated with Kawasaki disease.

1)理化学研究所統合生命医科学研究センター 循環器疾患研究グループ、 2)千葉大学大学院 医学研究院 公衆衛生学、3)日本医科大学 小児科学教室、 4)東京女子医科大学八千代医療センター 小児科、5)和歌山医科大学 小児科学教室、 6)千葉大学大学院 医学研究院 小児病態学、7)千葉県こども病院 循環器科、 8)東邦大学医療センター大森病院 小児科、9)国際医療福祉大学 福岡保健医療学部、 10)成育医療センター研究所 免疫アレルギー研究部免疫療法研究室、 11)群馬県立小児医療センター 循環器科、 12)Division of Clinical Pharmacology and Toxicology The Hospital for Sick Children、 13)群馬大学大学院 医学系研究科 小児科学教室、 14)東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 疾患多様性遺伝学、15)川崎病遺伝コンソーシアム

〇尾内 善広1)2)15)、深澤 隆治3)15)、寺井 勝4)、濱田 洋通4)、本田 隆文4)、鈴木 啓之5)、 末永 智浩5)、武内 崇5)、安川 久美4)、江畑 亮太6)、東 浩二6)7)、佐地 勉8)15)、 監物 靖8)15)、高月 晋一8)15)、濱本 邦洋9)、阿部 淳10)15)、関 満11)13)15)、小林 徹12)13)15)、 羽田 明2)、田中 敏博1)14)

【目的】 近年の遺伝疫学研究の結果からその活性化が川崎病の病態に関与していることが示唆されるCa2+/NFAT経路上のタンパク、ORAI1に注目し、同遺伝子の遺伝子多型と川崎病の罹患感受性との関連を検討する。

【方法】 まずORAI1遺伝子を含む23kbの領域につき24人(川崎病12人、対照12人)のDNA配列を解読し、遺伝子多型の検索を行った。続いて94人の対照について見出された遺伝子多型の型を決定、アレル頻度の決定を行い、頻度5%以上のものを連鎖不平衡解析によりグループ化した。次に各グループより代表を一つ選出し川崎病730人、対照1,315人の間で関連解析を行った。関連の傾向が見られた場合、独立した患者・対照(川崎病1,586人、対照1,097人)で検証した。

【結果】 見出された全68箇所の多型のうち、頻度5%のものは37箇所であった。これらは9つの互いに強い連鎖不平衡(r2 ≥ 0.8)にある多型が構成するグループに分けられた。選出された9つの一塩基多型(SNP)のうち、非同義置換であるrs3741596(p. S218G)が関連の傾向を示した(OR = 1.19, 95%CI 1.02~1.40, P = 0.028)。この傾向は独立した患者・対照の追加解析においても認められ、メタ解析後の関連は統計学的に有意となった(OR = 1.20, 95%CI 1.08~1.33, P = 0.00098)。またORAI1タンパクのN末端付近に存在するプロリン残基の繰り返し配列が伸長(5回→7回)する稀な6塩基の挿入多型につき全サンプルを用い関連解析したところ、挿入型の頻度が患者群で多い傾向が見られた(rs78448924;OR = 3.91,95%CI 1.30~11.80, P = 0.010)。

【考察】 ORAI1遺伝子上の複数の多型が川崎病の罹患感受性と有意に関連もしくは、その傾向を示し、Ca2+/NFAT経路の重要性を考える上で示唆に富む結果である。rs3741596および連鎖不平衡にあるSNP群の感受性アレルは白人集団には存在しないかまたは極めて低頻度であることから、罹患率の人種差の一因である可能性が考えられる。個々の多型のORAI1タンパク機能に及ぼす影響は未知であり、その解明が今後の課題である。

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O-19 ヒト冠動脈病変進行においてテネイシンCは血管保護的に働く可能性がある

Tenascin-C is likely to protect human coronary arteries in progression of aneurysms.

1)国立国際医療研究センター 小児科、2)三重大学大学院 ゲノム再生医学講座、 3)国立国際医療研究センター 循環器科、4)成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー研究部、 5)富山大学医学部 小児科、6)東邦大学医療センター大森病院 小児科学講座、 7)国立循環器病研究センター 小児循環器科、8)久留米大学医学部 小児科学教室、 9)北海道大学医学部 小児科、10)三重大学医学部 小児科、11)福岡大学医学部 小児科

〇大熊 喜彰1)、今中 恭子2)、廣江 道昭3)、松下 竹次1)、阿部 淳4)、市田 蕗子5)、 佐地 勉6)、白石 公7)、須田 憲治8)、武田 充人9)、三谷 義英10)、吉兼 由佳子11)

【背景と目的】 我々はこれまで治療前の血清テネイシンC(TN-C)値がIVIG不応性を予測すること、つまり急性期においてはTN-Cが川崎病の炎症・病勢を反映することを報告した。今回、治療により炎症はコントロールされているにもかかわらず、第10~14病日に血清TN-C値が再上昇した症例を検討することで、冠動脈病変(CAL)形成におけるTN-Cの役割に関して検討する。

【方法】 2011年3月から2013年6月までに共同研究施設に入院した川崎病症例のうち、治療前・治療後2日・第10~14病日の血清TN-C値を測定した74例(CALなし:n=66、あり:n=8)を対象とした。治療とともにTN-C値が低下したReascend(-)群(n=39)と第10~14病日にTN-C値が再上昇したReascend(+)群(n=35)の患者背景、追加治療の有無、検査データ、CALの有無などを比較した。

【結果】 両群で性別、月齢、診断病日、追加治療の有無、有熱期間、治療前WBC、Neut%、Plt、Alb、T-bil、AST、ALT、BUN、Cre、Na、CRP、IgG、第10~14病日のCRPに差を認めなかった。Reascend(+)群はReascend(-)群に比較して、治療前TN-C値に差を認めないものの、有意に治療後TN-C値が低く(median 58.2 vs 97.2ng/mL, p=0.007)、有意にCAL形成が少なかった(1 vs 7, p=0.033)。

【考察】 第10~14病日にTN-C値が再上昇した群でCAL形成が少なかった理由として、急性期に炎症に伴って発現したTN-Cが治療後、炎症の沈静化を反映して減少するが、修復期に再び発現して冠動脈拡大に対し保護的に働いた可能性が考えられた。

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会長要望演題[ 成人期の川崎病 ] 15:05~16:05

座長:日本医科大学付属病院 小児科     深澤 隆治
国立循環器病センター 小児循環器科  津田 悦子

コメンテーター:湘南東部総合病院 循環器科        上村  茂
東京医科歯科大学 小児・周産期地域医療学 土井庄三郎

O-20 本年経験した川崎病後遺病変が強く疑われた若年成人突然死例

a sudden death of young adult with coronary arterial lesions that were highly suspected of KD sequela

1)東邦大学医療センター大橋病院 病理診断科、2)東京都監察医務院、3)順天堂大学医学部 法医学、 4)埼玉医科大学医学部 法医学

〇大原関 利章1)、横内 幸1)、勝碕 譲児1)、高橋 啓1)、斎藤 一之2)3)、高田 綾2)4)、林 紀乃2)

 川崎病後遺症が強く疑われた若年成人突然死例を経験した。

症 例:27歳、男性、会社員。

既往歴:幼少時「リンゴ病(詳細不明)」。嗜好:機会飲酒、喫煙20本/日

死亡の状況:2013年X月、夕方から午前0時まで勤務。午前1時頃から居酒屋にて友人と飲食。午前3時頃、左脇腹から左上腕部内側を苦しそうにさすりながら「最近酒を飲むと痛くなる」と話す。午前4時頃、「痛みが治まらないので先に帰る」といって一人で帰宅。約30分後、200m離れた路上で仰向けに倒れているのを発見された。当初、警察官の問いかけに答えていたが、高いいびきをかき始め、直後に目と口を開き手足の痙攣が始まった。AED、心臓マッサージ施行しながら救急搬送されたが、蘇生処置に反応なく死に至った。

剖検所見:身長173 ㎝、体重59 ㎏。心重量342 g。LMT~LADseg. 8にかけて最大径4.5×5.0 ㎜、50 ㎜以上の動脈拡張を認めた。動脈には全周性の細胞線維性内膜肥厚を認め、拡張の強いSeg. 6では帯状の石灰化を伴っていた。さらに、LCxとの分岐部で内膜びらんを伴う血栓性内腔完全閉塞像がみられた。RCAは割面にて3.5×5.0 ㎜大の動脈瘤をみ、瘤内には血栓性閉塞後の再疎通像が複数存在した。この再疎通像は50 ㎜以上の長さで観察され、再疎通血管は明瞭な壁構造を示した。いずれの部位でも炎症細胞は外膜にごく軽度認めるのみで、粥状動脈硬化症も極めて軽微であった。心筋には微小線維化巣が散在する他、前壁中隔から側壁に急性虚血性変化を思わせる心筋線維の好酸性化と細小化を認めた。腸骨動脈や肋間動脈、腸間膜動脈などには目立った変化はなかった。

 本例は川崎病既往が未確認であるが、観察された動脈病変はこれまでの川崎病後遺病変と類似し、川崎病罹患によりもたらされた変化である可能性が高い。これまでに検討した若年成人の川崎病既往例および関連症例の冠動脈病変と比較させ報告したい。

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O-21 2度の妊娠出産を経験した川崎病の重症冠動脈病変を有する一例

Successful pregnancy and delivery in a patient with severe coronary artery disease caused by Kawasaki disease

1)富山大学 第二内科、2)富山大学 小児科、3)富山大学 産婦人科

〇平井 忠和1)、亀山 智樹1)、城宝 秀司1)、稲尾 杏子1)、能澤 孝1)、井上 博1)、市田 蕗子2)、福田 香織3)、米田 哲3)

【背景】 川崎病の冠動脈病変を有する妊娠出産例が近年、増加傾向にあるが、重症冠動脈病変を有する妊娠出産については不明な点が多い。今回、我々は川崎病後遺症による巨大冠動脈瘤と高度狭窄を有し、二度の妊娠出産した症例を経験したので報告する。

【症例】 32歳女性。5歳時、川崎病に罹患しその際心嚢水貯留、冠動脈三枝に動脈瘤をみとめワルファリン、アスピリンの内服を開始された。8歳時冠動脈内に壁在血栓が疑われ血栓溶解療法を施行されている。24歳時の冠動脈造影では、左右の冠動脈近位部にそれぞれ径18 ㎜と12 ㎜の冠動脈瘤と左回施枝の完全閉塞を認めた。ペルサンチン負荷心筋シンチで下後壁領域に再分布を認めたが、心エコ-上、左室収縮機能は正常でトレッドミル運動負荷であきらかな心電図変化を認めなかったため妊娠が許可された。29歳時初回妊娠。妊娠前より内服していた抗血小板薬、β遮断薬は妊娠中も継続した。妊娠後期には心エコ-上、左室容量負荷と下後壁の壁運動異常をみとめたが胸部症状はなかった。分娩時の心イベントを避けるため妊娠38週4日に全身麻酔下で帝王切開術を施行。女児出産。術後合併症なく、母子ともに健康で、退院した。32歳時、第二子挙児希望により妊娠。妊娠経過は良好であったが、妊娠37週6日、胎児要因で準緊急で帝王切開術施行。男児(体重1,948g)を出産(APS 3/7)。その後順調に経過し退院となった。

【考察】 川崎病による重症冠動脈病変を有する例においても詳細な心筋虚血の評価と適切な妊娠分娩管理により二度の出産が可能であった。関連各科の連携による管理体制が重要と思われた。

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O-22 冠動脈瘤を合併した成人発症型川崎病の一例

A Case of Adult-Onset Kawasaki Disease with Coronary Aneurysms

1)順天堂大学 小児科、2)多摩南部地域病院、3)八重洲クリニック

〇塚田 瑞葉1)2)、秋元 かつみ1)、鈴木 光幸1)、福永 英生1)、古川 岳史1)、大槻 将弘1)、 高橋 健1)、稀代 雅彦1)、清水 俊明1)、鈴木 淳子3)

【はじめに】 川崎病(KD)は5歳以下の小児に好発し、成人期発症例は国内外でも90例あまりと稀である。今回年齢的な要因から診断・治療介入までに時間を要した成人期発症のKDを経験したので文献的な考察を交えて報告する。

【症例】 生来健康な17歳女性。11月初旬に発熱・関節痛が出現、第3病日に内科を受診した。インフルエンザ迅速検査陽性であり治療が開始されたが、翌日に全身に紅斑が出現し、薬疹を疑われ薬剤変更された。その後一旦解熱したが、第6病日に再度発熱し、眼球結膜充血・苺舌・頸部リンパ節腫脹が出現した。第7病日に内科を再診、A群溶連菌迅速検査陽性でありAMPC投与を開始したが解熱せず、第10病日に両手掌に紅斑が出現、第12病日に内科へ入院した。臨床経過よりKDが疑われ、第14病日に小児科に転科、第15病日には手指に膜様落屑が出現しKDと診断した。治療はステロイドパルス療法(第16~18病日)を選択したが、第17病日に施行した心エコー検査で3枝に冠動脈瘤を認めた。治療開始後急性期症状は速やかに消退し、CRPは一度陰性化を確認したが、第22病日に眼球結膜充血が再度出現した。第24病日にはWBC上昇・CRP弱陽性を認め、KD再燃の診断で同日IVIG(2g/day, total 80g)を施行し、眼球結膜充血の消退・CRP陰性化を再度確認した。その後3DCTで3枝に多発性冠動脈瘤を認め、ワルファリンを導入し、第36病日に退院となった。

【結語】 年齢的な要因から診断までに時間を要した成人発症型川崎病を経験した。本症例ではステロイドパルス療法を第一選択とし、再燃時にIVIGを施行したが、治療開始後冠動脈病変は増悪なく経過した。

【考察】 KDの成人発症例は、非典型的な症状を呈することもあり、膠原病類縁疾患や薬疹との鑑別が重要となる。今後症例を蓄積し、薬剤の選択・投与量、そして内科への本疾患の周知等が検討課題であると考える。

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O-23 川崎病長期フォローアップ外来の現状〜循環器内科と小児科合同診療の試み〜

The trial of the joint medical care of cardiologists and pediatric cardiologists in the long-term follow-up KD clinic

日本大学医学部 小児科学系小児科学分野

〇加藤 雅崇、住友 直方、神山 浩、渡邉 拓史、松村 昌治、阿部 修、唐沢 賢祐、鮎澤 衛、能登 信孝、高橋 昌里

【背景と目的】 2013年4月から川崎病(KD)長期フォローアップ外来で循環器内科と小児科合同診療を行っており、合同診療経験をふまえ考察する。

【症例1】 35歳女性。6歳時にKD発症。急性期より左前下行枝(LAD)に瘤を認めた。今回、小児科に5年ぶりの再診である。LDL131、HDL55、HbA1c5.5、CTでLAD巨大瘤のみで有意狭窄なく、心筋血流イメージング(MPI)は異常なく両所見は一致。合同診療で循環器内科がワルファリン追加の提案をしたが妊娠を考えており、現行治療(アスピリン、チクロピジン、ニコランジル)の継続と3年後のKD長期フォローアップ外来検査の方針。

【症例2】 44歳女性。8歳時にKD発症。発症1年のCAGでLADの巨大瘤と右冠動脈完全閉塞を認めた。今回4年ぶりの定期検査で、LDL112、HDL61、HbA1c5.8、CTで右冠動脈閉塞後再疎通、対角枝狭窄とMPIは後下壁の陳旧性梗塞、前壁虚血を認め両所見は一致。合同診療で現行治療(アスピリン、ワルファリン)にアトルバスタチンの併用、3年後に循環器内科でCAGの方針。

【症例3】 30歳男性。3歳時にKD発症。急性期よりLADに巨大瘤を認めた。6歳時に急性心筋梗塞の診断で、静脈グラフトによる緊急バイパス術施行後バイパス閉塞になり、18歳時に動脈グラフトによるバイパス術施行。今回3年ぶりの定期検査で、体重87 ㎏、BMI27.8、LDL150、HDL40、HbA1c5.5、CTでLADバイパス末梢部の造影不良、対角枝閉塞、右冠動脈閉塞とMPIは前壁、後壁、心尖部に陳旧性梗塞を認め両所見は一致。合同診療で体重コントロール、禁煙指導と現行治療(アスピリン、クロピドグレル、ニコランジル)にアトルバスタチンの併用、2年後に循環器内科でCAGの方針。

【考察】 循環器内科医の生活習慣病に対する徹底指導とスタチン導入のタイミング、成人対成人の診療姿勢は、小児科医も習得する必要がある。成人期の川崎病管理は循環器内科が主科となるため、合同診療を含めた診療体制が有益であると考える。

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O-24 成人期川崎病患者から浮かび上がってきた数々の問題点

Many problems detected in adult patients who have history of Kawasaki disease

広島市立広島市民病院 循環器小児科

〇石口 由希子、鎌田 政博、中川 直美、森藤 祐次

【目的】 成人期川崎病(KD)の問題点につき調査。

【対象】 過去13年間にフォローアップされた成人KD患者25例(男16, 女9)。他院で急性期治療14例、急性期診断が全くされていなかった症例も1例あった。現在の年齢は22-36歳であり、急性期治療が不明なもの8例。急性期IVIG投与あり9例で、うち2例は初診時すでに冠動脈瘤を認めていた。

【結果】 観察施設)ドロップアウト2、怠薬5、別施設でフォローアップ3、循環器内科と併診8で、当科のみ受診7であった。冠動脈病変)最終受診時点で瘤のみ13、狭窄あり12で心筋梗塞既往は7例であった。治療1)内服:CABG後の1例のみアスピリンとワーファリン併用。他は全例アスピリンのみであった。治療2)カテーテル治療:狭窄病変を伴った13例中、PTCR 3例、POBA 2, ROTA 2例(3回)で、ROTA 2回施行した1例は、右冠動脈完全閉塞例で2回再開通を得たものの、共に再閉塞に陥り、現在内服のみで経過観察されている。治療3)CABG/ICD:梗塞7例中3例がCABGを受けていた。CABG2例で心機能低下を認め、うち1例はVF既往でICD植え込み、他の1例はVTのため抗不整脈薬を内服中であった。妊娠)女9例中7例が結婚。4例で計6回妊娠出産の既往があった(当院5、他院1)。当院出産の3例では、妊娠中アスピリン内服で管理を行い、後期になってヘパリン静注に変更後出産していた。帝王切開2、経膣分娩3で、全例成熟児を無事出産していた。CABG後にICD植え込みを行いEF40%未満であった1例は妊娠禁忌とされていた。就労)男16例中ドロップアウト、他院紹介の2例を除く14例中12例は定職あり。無職1、パートタイマー1である。その他の合併症・問題点)うつ病1例、パニック障害1あり。喫煙1例、肥満3例で、うつ病の1例は高度肥満と高血圧を合併、そのコントロールに難渋している。

【結語】 成人期には小児循環器医のみではコントロール困難な数々の問題が山積しており、循環器内科、他科との密接な連携が必要と考えられた。

成人期川崎病患者から浮かび上がってきた数々の問題点

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O-25 成人式を迎えた若者における川崎病の病名認知度および既往歴認識と 喫煙状況に関する調査成績

Cross-sectional study of knowledge and recognition of Kawasaki disease among young adults

1)和歌山県立医科大学 医学部 公衆衛生学、2)日高医師会、3)御坊保健所(現 和歌山県福祉保健部健康局)、4)和歌山県立医科大学 医学部 小児科学

〇北野 尚美1)、大谷 和正2)、家永 信彦2)、中井 寛明2)、高辻 幹雄2)、池田 明彦2)、野尻 孝子3)、鈴木 啓之4)、竹下 達也1)、日高医師会 学校医部会2)

【背景】 川崎病既往歴を有する集団の年齢は上昇し一部は職域健診や特定健診・特定保健指導の対象となっている。身近な地域中核病院で40歳前後の急性冠症候群と、原疾患として川崎病疑いが経験されている。

【目的】 川崎病の病名認知度と、本人の既往の認識について、成人式での喫煙防止活動と連動して調査を行った。

【方法】 日高医師会が学校医を担当している1市6町で、平成24年および25年1月の成人式の対象者(新成人)に対して、無記名自記式質問紙調査を実施した。成人式会場で調査票を配布、記入、回収し、1町のみ郵送法で実施した。この期間の対象地域の新成人は1,960人で、式典出席者1,575人(出席割合80.4%)、調査票回収数1,199(回収割合76.1%)であった。川崎病に関する質問項目に欠損のなかった1,077(有効回答割合68.4%、新成人の54.9%)について記述疫学分析を行った。研究計画は大学倫理委員会で承認を受け、市町教育委員会の協力を得て実施した。

【結果】 『「川崎病」という病名を知っていますか?』に対し、知っている256(23.8%)、知らない821(76.2%)であった。『小さい頃に「川崎病(疑いも含めて)」にかかったことがありますか?』に対し、ある25(2.3%;男18、女5、性別不明2)、あるかもしれない20(1.9%;男14、女6)、ない57.3%、わからない38.5%であった。病名を知っているが既往をわからないと回答したものが35あった。喫煙状況について欠損を除く1,044例の分析で、現在喫煙10.3%、過去喫煙5.2%であった。川崎病既往があると回答したもので現在喫煙5、過去喫煙5、喫煙なし13、未回答2であった。既往があるかもしれないと回答したもので現在喫煙3、過去喫煙3、喫煙なし12、未回答2であった。

【まとめ】 19-20歳で川崎病の病名認知は約1/4にあった。既往歴の認識については、正確な川崎病の情報提供と調査の必要性を示す結果が得られた。喫煙割合は、川崎病の既往歴があると回答した群で低いと言えなかった。

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