ポスターセッション&アフタヌーンティー 16:10~16:40

[ 病理 ]

座長:東邦大学医療センター大橋病院 病理診断科 大原関利章

PⅠ-01 岡崎市民病院における20年間の川崎病の診断および治療法の変遷

Tracing a 20 years History of Diagnosis and Treatment of Kawasaki Disease at Okazaki City Hospital

岡崎市民病院 小児科

〇平野 雅穏、長井 典子、瀧本 洋一

【目的】 岡崎市(人口37.6万)と幸田町(人口3.7万)を合わせた約41万人の医療圏で唯一の総合病院である岡崎市民病院で診断および治療した20年間分の川崎病患者のデータを振り返り、今後の川崎病診断および治療に役立てる。

【方法】 1993年1月~2012年12月に当院で診断・治療した患者の診療録を用いてデータを抽出し分析した。

【結果】 1993年1月~2012年12月の20年間に当院で診断した川崎病の発生件数は745例であった。1990年代は年間患者数が約20例前後であったが、患者数は増加傾向にあり、2002年には41例、2012年は87例であった。

 診断の精度向上のため、通常の血液生化に加え、2000年から尿BMG、Fib/DDを、2001年からフェリチンを、2008年からはNTproBNPを、2009年からはHDLコレステロールを川崎病の検査セットに追加し、川崎病を疑う症例では治療前後でルチーン検査をしている。また頸部リンパ節炎で頸部エコーが多胞性の場合、かならず心エコーを施行するようにしている。

治療にアスピリンを用いたのは732件、免疫グロブリンを用いたのは641件、グロブリン追加投与は101件、ステロイドを用いたのは43件、シクロスポリンを用いたのは2件、アスピリン単独治療は96件であった。

 急性期に冠動脈瘤を合併したのは7人あったが巨大冠動脈瘤の形成はなかった。その他、難治例または急性期に一過性拡大のある症例で回復後に心臓カテーテル検査を行ったのは57人、さらに10年以上経ってから心臓CT検査を行ったのは18人であった。最終的に、遠隔期に冠動脈瘤が残存したのは0人であった。

【考察】 当院で診断・治療した745件の川崎病では、急性期に冠動脈瘤を合併しても、最終的には冠動脈瘤の残存を認めることはなく、川崎病の全国調査の冠動脈後遺症の成績よりも良好であった。これは、多種のマーカーを用いて、早期診断に役立てていること、第10病日までの病勢の鎮静化を目標に、積極的に追加治療を行ってきた成果だと思われた。

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PⅠ-02 鹿児島県における川崎病治療の変化

Treatments for Kawasaki disease in Kagoshima prefecture have been changing.

1)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野、2)鹿児島市立病院、3)鹿児島医療センター、 4)鹿児島生協病院、5)国立指宿病院、6)県立大島病院、7)鹿屋医療センター、8)済生会川内病院

〇江口 太助1)、上野 健太郎1)7)、吉重 道子7)、益田 君教2)、二宮 由美子3)、徳永 正朝4)、 荒武 真司5)、今村 真理6)、野村 裕一1)、河野 嘉文1)8)

【背景および方法】 川崎病の重症例における初期治療プレドニゾロン併用療法が行われるようになってきており、川崎病治療も変化し、その予後が更に改善することが期待される。2007年から2012年の6年間における鹿児島県の川崎病の治療状況について検討した。対象は鹿児島県内の基幹病院の7病院において川崎病で入院加療された例を後方視的に調査した。また、初期治療プレドニゾロン併用療法についての担当医の意識についてのアンケートも行った。

【結果】 全症例数は738例で、症例数は2007年の95例から2012年の169例と増加していたが、群馬スコアによる重症度には変化がみられなかった(2007/2012, 3.2±2.3/3.4±2.5)。群馬スコア5点以上が209例(28%)でIVIG不応例は85例(41%)、群馬スコア4点以下での14%より有意に高頻度だった(P<0.0001)。群馬スコア5点以上でプレドニゾロン(P)併用療法は2009年から行われ、計16例(P群)中IVIG不応が8例だった。IVIG単独群193例(G群)では不応77例と両群で差を認めなかった。ただ、P群はG群より群馬スコアが有意に高値だった(7.3±1.4 vs. 6.3±1.4, P=0.007)。基幹病院医師へのアンケートでは、初期治療プレドニゾロン併用療法については全員にその知識があり、群馬スコア5点以上の例で選択して行っている場合が多かった。現段階では行っていない医師は、経験がないので心配だという意見が多くみられた。

【考案および結語】 P併用療法はより群馬スコア高点例で行われていることから、不応例頻度低下はみらなかった。今後県下において症例検討会などでP併用療法に関する情報の共有を更に進める必要があるものと考えられた。

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PⅠ-03 当院における川崎病治療成績に関しての検討

Investigation of Kawasaki Disease Treatment Outcomes in Toyama Prefectural Central Hospital

富山県立中央病院 小児科

〇佐藤 啓、藤田 修平、久保 達哉、塩穴 真一、畑崎 喜芳

【背景】 川崎病急性期治療のガイドラインが改訂され、ガンマグロブリン不応リスク分類による一次治療での追加抗炎症治療が用いられるようになっている。当院では現在まで一次治療にはガンマグロブリン大量療法(2g/㎏/日)とアスピリン内服を基本治療としている。

【目的】 当院での川崎病治療成績とガンマグロブリン不応リスク層別化による感度・特異度を明らかにする。

【対象と方法】 対象は2007年から2011年までの4年間に当院で川崎病と診断・治療された100症例に関して、治療方法、ガンマグロブリン反応性、心合併症、不応リスクスコアの感度・特異度につき後方視的に検討した。

【結果】 診断時に解熱しておりアスピリン内服のみが施行された症例は6例、他94例はガンマグロブリン大量療法およびアスピリンもしくはフルルビプロフェン内服が行われていた。ガンマグロブリン不応例は20例(20%)であった。2次治療はガンマグロブリン大量療法のみが1例、残りの19例ではウリナスタチン投与が併用された。2回目の治療に不応で解熱しない症例は3例であり、ガンマグロブリン追加1例、メチルプレドニゾロンパルス1例、ガンマグロブリン追加+メチルプレドニゾロンパルス1例であった。心合併症に関しては巨大冠動脈瘤および冠動脈瘤形成症例はなく、一過性冠動脈拡大が5例(ガンマグロブリン反応例;3例(15%)、不応例;2例(2%))認められた。当院の症例のガンマグロブリン大量療法不応予測スコアは群馬大学のスコアが感度60%・特異度75%、久留米大学のスコアが55%・特異度74%、大阪川崎病研究グループのスコアが感度35%・特異度72%であった。

【結論】 当院ではガンマグロブリン大量療法不応例に対して、2次治療にウリナスタチンが併用され、冠動脈病変の永続的な合併症は認めなかった。現在使用されているスコアでは感度・特異度ともに低く、今後川崎病血管炎に特異的なマーカーを用いたリスク層別化が必要であると思われた。

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PⅠ-04 日本における川崎病の出現と罹患率上昇に少子化が関与した可能性

Decreasing fertility rate may explain the emergence and increase of Kawasaki disease in Japan

社会医療法人 愛仁会 千船病院 小児科

〇長尾 吉郎

【目的】 1960年代に日本で最初に報告された川崎病は、季節性・空間伝播性・鋭い一峰性の年齢分布などから、感染を契機とする疾患と考えられ、その罹患率は上昇を続けている。本研究では日本における川崎病の地理的分布と罹患率増加を説明する要因を疫学的に探索する(PLOS ONE誌本年7月号収載)。

【方法】 川崎病全国調査成績(1979-2010)を元に都道府県別の(i)川崎病罹患率および(ii)患児平均年齢を推定した。これらを目的変数とし7つの気候・社会経済因子を説明変数として多変量解析を行った。解析には空間的回帰(spatial regression)と時系列回帰(time-series regression)を用いた。

【結果】 いずれの回帰手法においても、罹患率・患児平均年齢とも合計特殊出生率(total fertility rate, TFR)と負の相関を示した(P<0.05)。TFRとは一人の女性が生涯に何人子供を産むかという値であり、多産の指標である。TFRの地理的分布は、罹患率・患児平均年齢の地理的分布と裏返しの傾向を示した。時系列回帰式に戦後日本のTFRを代入した結果、1960年代に川崎病が出現する状況が再現されたが、これは戦後、TFRが急激に低下したためである。

【考察】 以上の結果より急激な少子化により川崎病が出現し増加しつつあることが暗示される。患者平均年齢は感染力(force of infection)の逆数と考えられている。感染力とは「一人の人が一年間に、ある病原体に接触する回数」と定義され、環境中の病原体密度に正比例する。従ってTFRが患児平均年齢と負に相関するという結果は、多産(即ち同胞数が多い)だと感染力が高いことを示唆する。これは小児感染症の多くが同胞間で強い水平感染力を呈することを思えば理解しやすい。一方、TFRが罹患率と負の相関を示すという事実は、感染力が罹患率と「負」の相関を示すということである。本発表では、この逆説的結果を説明する機序についての仮説と、仮説を検証する疫学研究方法について提案する。

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[ 病因、基礎研究 ]

座長:京都府立医大大学院医学研究科 小児循環器・腎臓学 池田 和幸

PⅠ-05 IVIG製剤治療抵抗性川崎病へのインタフェロン適用可能性の探索 川崎病(KD)のtriggerは、花粉であろう(第11報)2013年東京都定点報告KD患者数は過去第2位の花粉飛散のあった2011年の過去最大の患者数を超える勢いである

Is it possible to apply Type I interferons to IVIG resistant KD? The trigger of KD is pollens(11). KD patient Nos. in ’13 are more increasing than in ’11.

1)皮膚科学疫学研究所(横浜市戸塚区戸塚町)、2)(独)理研横浜研究所、3)(独)科学技術振興機構

〇粟屋 昭1)2)3)

【背景】 IVIG不応例に近年、高価な抗炎症mab製剤の転用が試みられているが、抗炎症が目的ならば長年使用実績のあるより安価なIFN製剤の適応が着想される。著者は2002年以来アレルギー疾患・パーキンソン病・難聴等に共通なメラニン合成・代謝系脆弱性に着目し、KDはPID(Pollen- Induced Diseases)の1つであり、同時に起こるBCG接種跡腫脹反応も勘案して、「花粉被曝→免疫→花粉再感作→遅延型過敏反応のゆっくりとした亢進→全身性血管炎KD発症」の過程を辿る疾患であろうことを交差相関解析により明確にし(数報)、influenza(flu)流行期に発症が抑制される現象も報告してきた。

【方法・結果】 1982年以降の東京都感染症定点週報と花粉dataを解析した。13年の花粉飛散数は過去第2位の11年に次ぐ9,522個/㎝2であった。11、13年の25週までの患者数はそれぞれKD97→117、手足口病1,078→1,755、無菌性髄膜炎10→52と急増しており、花粉隔年蓄積効果が窺える。当時過去最大の花粉飛散があった1982年(今日花粉誘導と考えられるこれら疾患が多発した”1982年事象”が起こった年)と今年は様相が酷似している。一方、fluとKDの間に明確な逆相関性が見られた。

【考察】 花粉被曝によりcompromiseされた生体に、夏風virusへの易感染性が惹起されたとの想定もあり得るが実験医学の課題である。flu流行期にKD発症過程がblockされる知見は、flu vaccine接種が冬場のKD発症を春先に遅延させる効果を想起させる一方、この機作を積極的にKD治療に応用することを考案した。即ちKD発症時の冠動脈瘤形成に伴う虚血および血流障害をⅠ型IFNが改善する可能性を検討したところ、多発性硬化症に古くから臨床適応されているIFN-βは、神経細胞のみならず脳血管系への作用も知られ、一方BernardらおよびJalkanenらが独立に、心血管系低酸素虚血モデルでのIFN-βの効果を明らかにしており、mab製剤よりも先にIFN-βを投与する利点を示唆し大きな動機となる。

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PⅠ-06 川崎病におけるEBウイルス抗体価

Epstein-Barr virus antibody of the patients with Kawasaki Disease

KKR札幌医療センター 小児科

〇吉岡 幹朗

【背景と目的】 川崎病の原因は未だに不明であるが、発症には遺伝的背景の他、何らかの感染症の関与が推定されている。1980年代初頭に、川崎病患者のEBV抗体保有率が著しく低いことが報告され、川崎病はEBVの初感染ではないかと注目された。しかし、急性期の川崎病患児からEBVを検出するなど、川崎病とEBVの関連性を直接裏付ける証拠を見つけることができないまま、今では川崎病の原因としてEBVは半ば忘れ去られた感がある。しかし、川崎病患児のEBV抗体価が低いとすれば、その原因もまた不明である。最初の報告から30年以上が経過した現在の川崎病患児のEBV抗体価を再検討した。

【方法】 2010年1月から2013年5月までの3年5ヶ月間に、当院に入院した川崎病患者163例のうち、JIAとの鑑別が困難であった2例、及びEBV抗体価を測定できなかった9例を除く152例について、初診時のEBV抗体価を検討した。

【結果】 152例中148例(97.4%)において、VCA-IgG、VCA-IgM、EBNA抗体がいずれも陰性であった。EBV抗体価が陽性であった4例は、VCA-IgG抗体のみが陽性であった。また、4例中3例は生後3ヶ月未満であり、VCA-IgG抗体は母親からの移行抗体と考えられた。

【考察】

1. 川崎病患児のEBV抗体保有率は1980年代同様に極めて低かった。

2. この結果は、EBV初感染時期の高年齢化だけでは説明しにくいと思われた。

3. メカニズムは不明であるが、EBVに対する抗体・免疫が川崎病の発症に抑制的に働いている可能性が強く示唆された。

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PⅠ-07 川崎病マウスモデルにおけるウリナスタチン投与の検討

Effect of urinary trypsin inhibitor treatment for mouse model of Kawasaki Disease

1)防衛医科大学校 小児科、2)東京薬科大学薬学部免疫学教室

〇辻田 由喜1)、川村 陽一1)、金井 貴志1)、三浦 典子2)、大野 尚仁2)、野々山 恵章1)

【背景】 我々は好中球エラスターゼ阻害薬であるウリナスタチン(Urinary trypsin inhibitor:UTI)を免疫グロブリン療法(Intravenous immunoglobulin:IVIG)に併用する初期治療法で、有意に追加治療必要率と冠動脈病変合併率が減少することを報告した(Circulation. 2011;124(25):2822-2828. )。しかしこれまでウリナスタチンの治療効果を組織学的に検討した報告はない。

【目的】 川崎病モデルマウスにウリナスタチンを投与し、血中サイトカインの推移について検討する。

【方法】 4週齢マウス雄DBA/2の腹腔内にCAWS1 ㎎を第1-5日に連日投与した。第3日から5日間連続して投薬を行い、UTI群、IVIG群、UIT+IVIG群とした。実験7日、14日、35日のサイトカインを測定し、比較検討した。

【結果】 複数のバイオマーカーについて検討した。その結果、実験14日の血管炎マウスではIL-1αおよびLIF(Leukemia Inhibitory Factor)の上昇を認めたが、IVIG投与群、UTI+IVIG投与群では有意に抑制された。ただし、IL-1αはUTI単独群でも低下したものの、LIFはUTI単独群では抑制されなかった。現在、その他の実験日のサイトカインについても順次検討中である。

【考察】 好中球の血管壁への浸潤は7~9病日の比較的早期から認め、エラスターゼは弾性板、平滑筋層の破壊に強く関与する。UTIの初期併用が治療不応例を減少させて合併症を有意に減らした結果は、IVIGのみでは抑制できない川崎病の血管炎機序をUTIは抑制できる、といえる。今後、血管炎マウスで追加検討を行うことで、UTIで抑制されるサイトカインを同定する他、血管病変の重症度との関連について検討を行う予定である。

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PⅠ-08 CAWS誘発マウス川崎病様血管炎におけるIL-23-IL-17 axisの関与

Possible involvement of IL-23-IL17 axis in CAWS-induced Kawasaki disease-like murine vasculitis.

1)京都府立医科大学 大学院医学研究科 小児循環器・腎臓学、 2)京都府立医科大学 大学院医学研究科 腎臓内科学、3)京都第一赤十字病院 小児科、 4)東京薬科大学 薬学部 免疫学教室

〇鈴木 千夏1)、中村 明宏1)、沖垣 光彦2)、八幡 倫代1)、岡本 亜希子1)3)、吉岡 綾子1)、 池田 和幸1)、三浦 典子4)、大野 尚仁4)、濱岡 建城1)

【目的】 Candida albicans water soluble extract(CAWS)誘発血管炎マウスは、確立した川崎病動物モデルとして汎用されているが、血管炎発症にいたるその分子機序は、いまだ明らかでない。今回私たちは、CAWSの主要な構成成分であるβ-glucanが、その受容体であるdectin-1を介して樹状細胞などからのIL-23の産生を亢進させることに着目し、CAWS誘発血管炎の好発部位である冠動脈を含む大動脈起始部組織におけるIL-23受容体(IL-23R)陽性細胞、およびIL-23により産生が誘導されるIL17の分布を解析し、本病態モデルにけるIL-23-IL17経路の関与の有無を明らかにすることを試みた。

【方法】 CAWS誘発マウス血管炎モデルは大野、三浦らの方法に準じて作成した。IL-23R, IL-17の発現は、特異抗体を用いて主に免疫組織化学的方法により解析した。

【結果】 対照群、CAWS投与群ともに大動脈起始部の大動脈弁基部、大動脈弁および冠動脈の内膜にIL-23R/IL-17陽性細胞の存在を認めた。これらの細胞はCAWS投与群で明らかに増加した。

【考察】 慢性関節リウマチ等の基礎研究からIL-23-IL-17経路は自己免疫応答や慢性炎症と密接に関連する事が報告されている。今回の結果はCAWS誘発川崎病血管炎の発症機序にβ-glucanにより活性化したIL23-IL17経路が関与する可能性を示唆するとともに、本病態モデルにおける血管炎の部位特異性を規定するしくみの一端も説明しうると考えられる。

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[ 遠隔期の検査・診断・治療1 ]

座長:日本大学板橋病院 小児科 神山 浩

PⅠ-09 急性心筋梗塞に対して血栓吸引療法を施行した川崎病後巨大冠動脈瘤の1例

Aspiration thrombectomy for myocardial infarction in a child with a giant coronary artery aneurysm

倉敷中央病院 小児科 

〇林 良子

 今回、川崎病罹患後遠隔期に巨大冠動脈瘤内血栓性閉塞による急性心筋梗塞をきたし、緊急で血栓吸引療法を施行した小児例を経験したので報告する。

【症例】 9歳女児、身長130 ㎝、体重27 ㎏。

 3歳時に川崎病に罹患し、右冠動脈(RCA)、左冠動脈前下行枝(LAD)、左回旋枝(LCX)に巨大冠動脈瘤を残した。以後アスピリン、パナルジン、ワーファリン内服を継続し、経過観察。発症5年後の定期冠動脈造影では瘤内血栓は認めなかった。

 入院当日朝から左前胸部痛が出現し持続するため救急外来を受診。心電図上、V2-V5でST上昇、異常Q波を認め、心エコーで前壁中隔の壁運動低下あり、循環器内科に連絡し緊急PCIを施行した。

 静脈麻酔下に7Frのシースを右大腿動脈に挿入、冠動脈造影を行なった。LCX, RCAで瘤遠位部の血管造影遅延がみられたが、途絶は認めなかった。LAD近位部以遠で造影がみられず、瘤内血栓による完全閉塞と診断した。同部位で血栓吸引を繰り返し、大量の赤色血栓を吸引した。rt-PA計60万単位を冠動脈内注入し、瘤内血栓吸引を繰り返し、冠動脈造影でLADの瘤以遠の再疎通を確認した。PCI直後には、CK 6378IU/ℓ, CK-MB 245.6IU/ℓまで逸脱酵素の上昇がみられ、心保護目的にACE阻害薬、β遮断薬を導入した。また心筋梗塞発症時、PT-INR 1.18と低下していたため、抗凝固療法を強化した。再梗塞や不整脈などの合併症は認めず、第16病日に退院した。

【考察】 9歳女児において血栓吸引療法を施行し再疎通がえられ、手技による合併症はなかった。PCIに習熟した循環器内科医との連携、迅速な対応が重要と考えた。第35病日の心筋シンチでは、前壁中隔のviabilityはなく、今後の治療方針として、残りの2枝(右冠動脈、左回旋枝)の冠動脈瘤遠位部への冠動脈バイパス術を検討中である。


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PⅠ-10 巨大冠動脈瘤を有す患者の飛行機旅行

FLYING WITH GIANT CORONARY AEURYSMS CAUSED BY KAWASAKI DISEASE

1)久留米大学医学部 小児科、2)日本医科大学医学部 小児科、3)日本大学医学部 小児科、 4)京都府立医科大学 小児循環器・腎臓学

〇寺町 陽三1)、須田 憲治1)、小川 俊一2)、神山 浩3)、浜岡 建城4)

【目的】 川崎病後に巨大冠動脈瘤を残した患者は、一般的に瘤内血栓形成予防のためワーファリン+アスピリンを用いた抗凝固療法を受けている。一方、航空機旅行は、凝固能を亢進させ「エコノミークラス症候群」など血栓塞栓性疾患をきたすことが知られている。本研究は、多施設での経験に基づいて巨大冠動脈瘤を有す患者の航空機旅行(AT)の安全性について検討したものである。

【方法】 巨大冠動脈瘤患者の治療経験の豊富な4施設にアンケートを送り、ATの経験者の有無、性別、瘤の大きさ、位置、AT時の年齢、旅行回数、AT時間、ATの内服薬、ワーファリン内服中の際はPT-INR、心イベントの有無、最終受診時年齢について調査した。

【結果】 16例(男13)が、53(往復50、片道3)回のATをしていたが、心イベントを起こしたことは無かった。瘤の大きさは14.7±7.0(8-33) ㎜、9例は左冠動脈、5例は両冠動脈、2例では右冠動脈に瘤を認めた。AT時の年齢は8.8±4.8(0.6-21)歳、発症後6.1±4.7(0-20.2)年、患者ごとのAT回数は中央値1(1-22)回、AT時間は1.5-13時間、3時間未満が48回(91%)で、10時間以上は4回のみであった。ATの目的は、受診あるいは旅行が4回、手術目的6回、カテーテル治療目的1回であった。35回(66%)はワーファリンを内服し、AT前のPT-INRは1.6±1.7(0.9-3.6)で、16回は抗血小板剤内服していた。急性期に巨大瘤に気づいていなかった例は、プレドニンを内服して2回ATをしていた。2例は90%以上の冠動脈狭窄を有していた。1例はアスピリンのみ内服して10時間のAT後、無事に外科治療を受けた。もう1例はアスピリンとジピリダモールを内服してセカンドオピニオンを得るため2時間のATをした。本例は、後にカテーテル治療と外科治療を受けた。現在、全例生存中であり最終年齢は16.3±7.9(6.1-30.5)歳である。

【考察】 データは限られているが、巨大瘤を有す患者のATは、3時間までであれば、安全に行える。

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PⅠ-11 川崎病による末梢動脈瘤の遠隔期血管エコー所見

The late findings of peripheral aneurysms due to Kawasaki disease by two-dimensional echocardiography

1)国立循環器病研究センター 小児循環器科、2)国立循環器病研究センター 臨床検査部

〇星野 真介1)、津田 悦子1)、井門 浩美2)

【背景】 川崎病(KD)による冠動脈瘤が出現した部位は、遠隔期に冠動脈の壁肥厚がみられる。KDは全身の中小血管炎で冠動脈以外に末梢動脈瘤(PAN)を形成することがあるが、遠隔期の変化、画像所見についての報告は少ない。

【目的】 KDによりPANを有した患者の遠隔期の末梢動脈の血管エコー画像所見について検討する。

【対象と方法】 PANを合併し、遠隔期に末梢血管エコーによるPAN、末梢動脈の観察を行った8例(男:女=6:2)である。KD発症は3-22ヶ月(中央値6ヶ月)で、KD罹患後1-21ヶ月(中央値2ヶ月)の心臓カテーテル検査による末梢動脈造影でPANが確認された。PANの発生部位は腋窩動脈(Ax)7例、総腸骨動脈(Com)3例、内腸骨動脈(Int)6例、大腿動脈(FA)1例であった。KD罹患後7-24年(中央値19年)の遠隔期の末梢動脈造影では、Ax 7例中1例、Int 6例中3例、Com 3例中2例、FA 1例は退縮した。遠隔期7-24年(中央値19年)で施行した血管エコーにおいて、正常、退縮、瘤残存の3群に分け、動脈血管径、壁肥厚について後方視的に検討した。3群間の比較は、一元配置後、多重比較を行った。

【結果】 血管径と動脈壁肥厚が測定できた36部位は、正常10、退縮11、瘤残存15であった。血管径は、正常5.13±1.43 ㎜であり、退縮では7.10±1.00 ㎜、瘤残存では11.3±3.14 ㎜であった。瘤残存の血管径は、退縮、正常に比べ有意に大きかった(p<0.05)。動脈壁の計測では、正常血管壁0.37±0.13 ㎜、退縮0.75±0.64 ㎜、瘤残存1.31±0.80 ㎜であった。瘤残存の血管壁は、正常に比べ有意に肥厚していた。(p<0.05)。

【まとめ】 川崎病によるPANの遠隔期血管エコー所見では、瘤残存の部位に有意な血管壁の肥厚を認めたが、正常部位では血管壁の肥厚はみられなかった。

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PⅠ-12 冠動脈瘤に狭窄を併発しA-Cバイパス術、PTCRAを経験した1例のMRIによる評価

MRI findings of a patient who experienced twice Kawasaki disease, coronary aneurysm&stenosis, AC bypass, and PTCRA

KKR立川病院 小児科

〇堀口 泰典

【目的】 川崎病2回既往、左右冠動脈瘤遺残、瘤入出口部狭窄、左右A-Cバイパス手術とその閉塞、左冠動脈にPTCRAを経験した30歳の1例をMRIを用いて評価し、その所見を報告する。

【方法】 (症例)4歳時、川崎病に罹患。γグロブリン投与により回復したが、3ヶ月後再発。再発時、左右冠動脈瘤(右セグメント2、左セグメント5~分枝部)を遺残した。アスピリン等抗血小板薬投与下に経過観察されたがそれぞれ瘤出口部狭窄が生じたため左右内胸動脈を用いたACバイパス手術を10歳時に実施された。しかし、左右共閉塞したため左冠動脈病変に対してPTCRAを14歳時に実施した。この間、狭心症、心筋梗塞の発症は無かった。

【結果】 MRIでは、胸骨ワイヤーによるアーチファクトがあったが冠動脈形態、閉塞したバイパス血管等の形態、心機能、心筋障害所見などの評価が可能であった。

(冠動脈所見)セグメント(#)1:著しい蛇行、#2:再疎通血管様所見、#5LMT4.6 ㎜φ、#6 LAD 6.3㎜φ瘤内に気質化血栓あり壁不正、瘤直前1.4㎜φの狭窄などが認められた。またSpiral BBではいずれも壁肥厚、器質化血栓などが明らかで、壁不正が著しかった。

 幸い心筋梗塞所見はなかったがATP負荷により心室中隔心内膜下にPerfusion defectが明らかで、運動時の虚血の存在が示唆された。

【考察】 本例は冠動脈瘤の狭窄に対して投薬のみならず、ACバイパス、PTCRAなど最先端医療を実施し、今まで負荷心電図上虚血変化見られず、心事故なく経過良好であった。しかし、MRI ATP負荷時に心筋虚血が明らかに生じていた。このことは成人期まで良好に経過した例でも本検査を行い、虚血の有無を評価する必要があることを示唆している。

【結論】

1) 川崎病冠動脈瘤が生じ、その後心事故なく経過している例においても“silent ischemia”が生じている可能性がある。

2) MRI ATP負荷検査はそのような症例の精査に有用である。

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PⅠ-13 OCTで多彩な病像を認めた左前下行枝の90%狭窄病変に対し、 エキシマレーザー治療で100%開存を得た24歳の川崎病男性例

Excimer laser showed the 100% opening effect on the LAD 90% stenosis detected by OCT in 24-year-old man

1)東京医科歯科大学附属病院 小児科、2)東京医科歯科大学附属病院 循環器内科

〇宮下 智行1)、前田 佳真1)、石井 卓1)、細川 奨1)、西山 光則1)、足利 貴志2)、 土井 庄三郎1)

 症例は24歳男性。生後4か月時に川崎病に罹患しアスピリンとガンマグロブリンで治療された。発症後3か月の冠動脈造影で両側7 ㎜の冠動脈瘤を認めた。1歳時には右冠動脈の完全閉塞を認め、左回旋枝から右冠動脈領域への側副血管を認めた。その後、抗凝固療法を継続し自覚症状なく経過していたが、23歳時の冠動脈CTで左冠動脈瘤内に石灰化と狭窄所見を認めた。冠動脈造影でSeg 6に90%狭窄病変を、負荷シンチで誘発虚血所見を認めたためにカテーテルインターベンション治療を選択した。Optical Coherence Tomographyにより、瘤内には内皮障害と石灰化など多彩な病像を認めた。エキシマレーザー冠動脈形成術施行後、バルーン拡張術を追加することにより100%開存が得られた。川崎病の冠動脈狭窄性病変に対するカテーテルインターベンション治療として、レーザー治療は安全かつ有効な治療であると考えらえた。

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[ 遠隔期の検査・診断・治療2 ]

座長:名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学 加藤 太一

PⅠ-14 川崎病発症より1か月後に心嚢水貯留を認めた乳児の2例

2 Cases of infant revealed pericardial effusion in the convalescent phase of Kawasaki Disease.

長崎大学病院 小児科

〇福永 啓文、橋本 邦生、本村 秀樹、森内 浩幸

 川崎病急性期において、心嚢液貯留は時折認められるが、多くは一過性で治療経過とともに速やかに消失する。今回われわれは典型的な川崎病症例で大量ガンマグロブリン療法に反応し心合併症なく退院したが、回復期に一過性の発熱と心嚢液貯留を認めた乳児を2例経験した。心タンポナーデが危惧されたが、ステロイド、NSAIDsの保存的治療のみで再発や後遺症なく治癒できた。

症例1:生後10か月、男児。

 4病日に診断確定しガンマグロブリン大量療法(IVIG)施行、5病日に解熱した。14病日に心合併症なく退院となった。46病日に発熱あり、翌日に解熱した。48病日の定期受診時、心エコーで心嚢水貯留を認めたため他院入院となった。49病日当院転院。全周性に約15 ㎜の大量の心嚢液貯留を認めたが、冠動脈は正常で、川崎病様症状は認めなかった。循環的に安定していたので心嚢穿刺準備下に保存的治療を選択した。自己免疫機序によるpost-cardiac injury syndromeを疑い、プレドニゾロンの静注とアスピリンを増量した。入院4日目に心嚢液は消失したのでプレドニゾロンを減量した。入院13日目に退院とした。

症例2:生後10か月、男児。

 3病日に川崎病と診断し、アスピリン内服とIVIG施行。4病日に解熱し、9病日に心合併症なく退院となった。19病日に一過的に体熱感あり。24病日の再診時、解熱していたが、心エコーにて全周性に3.8 ㎜の心嚢液貯留を認めた。循環は安定していたため、アスピリンを増量し、経過観察とした。26病日に心嚢液は減少していた。その後も心嚢液の再貯留なく、冠動脈病変もみられていない。

【考察】 現在のフォローアップガイドラインでの超音波検査は1、2、6、12ヶ月後とされている。このような症例もあるため経過中フォーカス不明の発熱を認めたら超音波検査を検討する必要があると思われる。川崎病の回復期に心嚢液貯留をきたす原因は明らかにされていないが、治療方針、管理について文献的検討も交えて報告する。

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PⅠ-15 川崎病遠隔期における冠動脈石灰化と血管機能評価

Correlation between coronary calcification and endotherial function in patients with history of Kawasaki disease

1)京都府立医科大学 大学院医学研究科 小児循環器・腎臓学、2)京都第一赤十字病院 小児科

〇八幡 倫代1)、池田 和幸1)、吉岡 綾子1)、岡本 亜希子1)2)、鈴木 千夏1)、濱岡 建城1)

【目的】 川崎病遠隔期において、冠動脈障害(CAL)を残した症例では、硝子化線維組織を主体とする後炎症性動脈硬化を発症し、なかでも巨大瘤を有する症例では高率に石灰化を伴うようになることはよく知られている。川崎病冠動脈の石灰化発症の機序については未だ不明の点が多いが、一般的に冠動脈の石灰化は冠血管イベントのリスクファクターとみなされ、近年その発症予防にも徐々に注目が集まっている。予防に際しては器質的変化が起こる以前の機能的障害の段階での介入がより良いと考えられ、したがって早期の対応を考慮した血管内皮細胞機能障害の検出に焦点があてられつつある。種々の検査方法のうちでも血管内皮由来NOの放出を誘発するreactive hyperemiaを用いたflow-mediated vasodilatation(FMD)はその鋭敏性から近年特に注目されており、成人の循環器領域ではすでにその有用性には定評がある。今回このFMDを用いて川崎病遠隔期における血管機能障害を評価した。

【方法】 川崎病遠隔期症例31例を対象とした。CAL(-)11例、CAL(+)20例でそのうち石灰化(-)が7例、石灰化(+)が13例であった。FMDはユネクス社製(Japan)測定機器EFを用いた。

【結果】 Cal(+)群はCAL(-)群と比較してFMDは有意に低値を示した(p=0.0001)。また、CAL(+)群のうち、石灰化(+)群は石灰化(-)群と比較して有意に低値であった(p=0.0027)。

【結語】 FMD測定で血管機能低下を早期段階で捉えることにより動脈硬化発症もしくは冠動脈石灰化発症を予測できる可能性が示された。FMD測定は川崎病遠隔期における冠動脈障害の経時的変化を把握するにあたり重要な手段のうちのひとつと考えられる。

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PⅠ-16 当院における川崎病後冠動脈瘤症例の予後

Outcome of patients with coronary artery aneurysms after Kawasaki disease

富山県立中央病院 小児科

〇中村 太地、藤田 修平、佐藤 啓、久保 達哉、畑崎 喜芳

【背景と目的】 ガンマグロブリン投与にもかかわらず、冠動脈病変を残す川崎病患者は依然認められ、冠動脈病変合併症例の経過は一様ではない。本研究の目的は当院における川崎病後冠動脈病変合併例の遠隔期経過を評価することである。

【対象と方法】 当院で川崎病と診断され治療を受けた例のうち、冠動脈後遺症を残し現在も経過観察されている10例(冠動脈小動脈瘤1例、冠動脈瘤6例、巨大冠動脈瘤3例)を対象とし、過去のカルテ記載から後方視的に検討した。

【結果】 発症年齢2±2.5歳、男9例、経過観察期間14±10年、γグロブリン投与例7例、ステロイド投与例6例(投与時期7±1.9病日)。慢性期内服治療(アスピリン10例、ジピリダモール1例、ワーファリン1例、ニコランジル2例)。急性期の冠動脈内径8.2±2.7 ㎜、遠隔期冠動脈内径5.7±2.3 ㎜、遠隔期心機能EF69±6%であった。冠動脈瘤形成部位は両側(7/10)、左のみ(3/10)(右冠動脈7例、左冠動脈主幹部9例、前下行枝9例、回旋枝4例)であった。50%以上の狭窄病変を合併したのは5例で内3例は完全閉塞(2例は再開通)、狭窄部位は右冠動脈4例、左主幹部1例、左前下行枝2例であり、いずれも瘤の出口部で徐々に進行した。学校管理は運動負荷心電図、シンチを指標に行い、全例Eに準じた管理がなされていたが、運動時の突然死、心筋梗塞、心室性不整脈は認められなかった。2例で冠動脈バイパス術が施行されており(15~19歳)、冠動脈瘤症例であった。発症からバイパス術が施行されるまでの経過観察期間は14~18年であった。

【結論】 冠動脈バイパス術を施行した2症例は発症後15年前後で、狭窄病変に対してバイパス術が施行されており、巨大瘤以外でも遠隔期に進行性に局所狭窄を来す例がある。川崎病後遠隔期管理において発症15~20年で狭窄病変の進行及び心事故発生に留意し、注意深い経過観察が必要と考えられた。

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PⅠ-17 血管室で冠動脈造影に引き続きドブタミン負荷心エコーを行い 包括的な心臓評価をした両側巨大冠動脈を有する女児例

Successive examinations, CAG and DSE as a comprehensive heart study in Kawasaki disease patient.

聖マリアンナ医科大学 小児科

〇麻生 健太郎、都築 慶光、長田 洋資、桜井 研三、中野 茉莉恵、後藤 建次郎、有馬 正貴

【背景】 冠動脈造影検査(CAG)は川崎病の冠動脈後遺症の血管形態評価においてGolden standardな検査であるが心筋虚血の評価は不十分で、他の検査(心筋シンチ、心臓MRIなど)での虚血評価とあわせて総合的に評価されることが多い。多くの病院でDPCが導入されたためCAG目的で入院した場合には他の検査の費用は加算されない。このため保険点数が高い検査は入院とは別に行われることが多くなり、結果として患者の通院回数は増加する。ドブタミン負荷心エコー(DSE)は虚血部位の検出に有用であり、普及した検査であるが評価の客観性に問題が残る。近年開発された2Dスペックルトラッキング法(2DST)を用いると局所壁運動の定量評価が可能となり、DSEでも客観的な評価が行える。冠動脈造影検査に引き続きDSEを行い心筋虚血の評価が行えれば、患者の通院回数を減らすことができ、医療経済的にもメリットがあるはずである。

【症例、結果】 7歳女児。γグロブリン療法2回とステロイドパルス療法を行ったが両側に巨大冠動脈瘤を残した。発症から4か月でCAGを施行。右冠動脈はSeg2まで続く巨大瘤を確認。左冠動脈は回旋枝に巨大冠動脈瘤を確認。前下行枝は閉塞。CAG終了後に動脈シース、心電図を残して血圧、心電図モニタリングを継続しながらDSEを開始。負荷に伴い心尖部、後壁、側壁に虚血部位での収縮が駆出期以降に生じるPost systolic shortening(PSS)現象が確認され虚血部位と判定した。

【結語】 DSE 2DSTとPSSを用いた虚血評価は簡便な検査とは言い難いく再現性にも問題が残る。しかし放射線被爆はなく、医療費も比較的に安価である。冠動脈造影検査に引き続き行うことで、短時間で包括的な心臓の評価が可能となる。患者の通院回数を減らすこと、入院収益を増やすことが可能で患者、医師双方にメリットがある。

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会長要望演題 これは川崎病か? 1 ]

座長:金沢大学医薬保健研究域医学系小児科 清水 正樹

PⅠ-18 川崎病の診断をみたした若年性特発性関節炎の1例 インターロイキン18測定の有用性

Extremely elevated values of IL-18 are useful for distinguishing patients with JIA from those with Kawasaki disease.

1)鹿児島大学病院 小児科、2)出水総合医療センター 小児科

〇江口 郁1)、久保田 知洋1)、山遠 剛1)、上野 健太郎1)、井之上 寿美2)、和田 昭宏2)、 江口 太助1)、野村 裕一1)、河野 嘉文1)、武井 修治1)

【症例】 4歳男児、39度の発熱で発症。7病日に川崎病と診断され2回のIVIG後も発熱が持続するため18病日に当院に転院した。転院時は弛張熱と血液検査で白血球増多と血小板の増加、CRP高値がみられた。また、インターロイキン18(IL-18)値は20,000 pg/㎖と著明に高値であった。熱型およびIL-18値の著明高値から全身型特発性関節炎(sJIA)と考え、22病日よりibuprofenでの治療を開始し速やかに解熱した。しかし、その後再発熱しステロイド投与で軽快した。

【考案】 川崎病のIVIG不応例は冠動脈後遺症を来さないためにも積極的な追加治療による早期解熱をめざす必要がある。その場合にsJIAと診断できれば追加治療を急ぐことなく除外診断を行っていくことも可能となる。ただその判断には豊富な臨床経験が必要で、必ずしも容易ではない。Maenoらは2002年にsJIAのIL-18値が川崎病より著明に高値であることを報告した(平均45,073 vs. 517 pg/㎖)。IL-18値は両者の鑑別に有用ではあるが、その後もその鑑別に苦慮する例の報告は多い。これは、IL-18値が当院のように研究室レベルで測定されてきたことが関連すると考えられるが、現在では商業的に測定サービスも提供されるようになっている。

【結語】 治療抵抗性川崎病とsJIAの鑑別は困難な場合があるが、IL-18値はその鑑別に有用であり、積極的に検査を検討すべきであるものと考えられた。

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PⅠ-19 無ガンマグロブリン血症に合併した川崎病の1例

A case of Kawasaki disease with Agammaglobulinemia

自治医科大学 小児科

〇宮澤 陽美、南 孝臣、森本 哲、八木 正樹、川原 勇太、岡 健介、高田 亜希子、石井 朋之、佐藤 智幸、山形 崇倫

【はじめに】 通常、川崎病の急性期には好中球は増加するが、無ガンマグロブリン血症を合併し、好中球、リンパ球の減少のため診断に苦慮した症例を経験したので報告する。

【症例】 2歳、男児。中耳炎を反復している。家族歴の詳細は不明。

【現病歴】 38.0℃台の発熱あり、近医で中耳炎としてAMPCと去痰薬を処方された。第3病日、発熱が持続し、好中球225/μℓと減少を認めたため紹介医へ入院。CRPは7.6 ㎎/㎗であり、CZOP投与されたがで解熱せず。第6病日、体温40℃、口周囲の水疱を伴う発疹と活気低下を認め、当院に転院した。体重11.4 ㎏、体温40.4℃、川崎病主要症状6/6を満たした。入院時検査では、白血球1,400(N 4%, L 42%, M 52%)、赤血球391万、Hb 10.4g/㎗、血小板30.9万、CRP 16.9 ㎎/㎗、LDH 701 U/L、IgG 61 ㎎/dL、IgA感度以下、IgM 50 ㎎/㎗、CD3 95.6%、CD19 0.9%であった。皮膚培養でMRSAを検出:表皮剥奪毒素遺伝子ETA(-)、ETB(-)、血液培養:陰性、骨髄検査:異常なし。心エコー:LMCA 2.7 ㎜、RCA 2.4 ㎜で輝度亢進を認めた。

【経過】 入院後、主要症状と冠動脈輝度上昇から川崎病と診断したが、好中球、リンパ球ともに低下していたため、敗血症の可能性も考慮し、IVIG 2g/㎏とアスピリン30 ㎎/㎏/dayに加え、VCM, PAPM-BPの投与を行った。第7病日に解熱し、第11病日には主要症状はすべて消失。第16病日から手指の膜様落屑を認めた。経過中、冠動脈の拡大はなかった。また、入院時IgGとCD19の低値から無ガンマグロブリン血症と診断した。

【考察】 急性期の好中球減少は、無ガンマグロブリン血症の感染時にも報告されているが、川崎病では一般的でない。無ガンマグロブリン血症と川崎病の合併もまれであり、病態を考える上で重要な症例と考えられた。

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PⅠ-20 著明な頸部リンパ節腫脹と肝脾腫を伴った不全型川崎病の1例

A case of incomplete Kawasaki Disease with cervical lymphadenopathy and hepatosplenomegaly

防衛医科大学校 小児科

〇川村 陽一、金井 貴志、千田 礼子、辻田 由喜、佐藤 一寿、大澤 麻登里、草野 智佳子、野々山 恵章

【症例】 6歳の女児。発熱および左頸部痛を主訴に近医を受診し、頸部リンパ節炎やムンプスの診断で抗菌薬および解熱剤を処方されていた。しかし症状の軽快なく、7病日に当院に紹介入院となった。入院時、40℃の発熱および著明な左頸部の腫脹に加え、眼球結膜の充血と口唇発赤を認めた他、腋窩及び鼠径リンパ節を触知し、肝を3横指、脾を1横指触知した。血液検査ではWBC 27,900/μL(N 91.2%)、CRP 26.8 ㎎/㎗、AST 78IU/L、ALT 46IU/L、Alb 2.6g/dL、Na 128mEq/Lと著明な炎症反応高値、肝機能障害、低アルブミン血症および低ナトリウム血症を認めた。また頸部の造影CTでは複数個の腫大したリンパ節の他、咽頭後壁にも造影効果のない低吸収域を認めた。治療は抗菌薬投与の他、アスピリン、ウリナスタチン、IVIGを併用したが、発熱が持続したためIVIG追加および抗菌薬の変更を行った。その結果、炎症反応は改善傾向を認めたものの、体温は37℃台後半で推移した。薬剤性の発熱の可能性も考慮してすべての薬剤を中止したところ、自然に解熱し、また検査所見も改善した。約3週間の入院経過で炎症反応は陰性化し、頸部リンパ節は弾性硬で触知可能ではあるものの、縮小して圧痛も認めなくなった。ただし肝脾腫がわずかに残存していたため、骨髄検査を施行したが、異常所見は認めなかった。なお、経過中に認められた川崎病の主要症状は4項目(四肢末端の変化と皮膚所見を除く)であり、冠動脈病変は認めなかった。

【考察】 経過中、MAS/HLHも疑ったが診断基準を満たさず、各種ウイルス検査はすべて既感染もしくは未感染パターン、また回復期に実施した骨髄検査でも悪性所見を認めなかった。頸部リンパ節腫脹や肝脾腫から原因検索を行ったものの、不全型川崎病以外には確定診断に至らなかった。

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PⅠ-21 因後膿瘍が疑われた川崎病の2例

Two cases of Kawasaki disease suspected retropharyngeal abscess

大阪厚生年金病院 小児科

〇泉井 雅史、佐野 哲也

【症例】 症例1は10歳男児。発熱、頚部腫脹、頚部痛を主訴に当院受診となり第4病日に造影CTにて咽後膿瘍が疑われ抗菌薬治療施行するが無効であった。第5病日には咽後膿瘍に対して切開排膿施行するが膿汁は認めず穿刺液培養においても菌の発育は認めなかった。第6病日に口唇発赤、手掌紅斑、眼球結膜が出現し川崎病と診断されステロイド併用γグロブリン大量療法およびアスピリン経口投与で症状は改善した。症例2は3歳男児。発熱、咽頭痛を主訴に受診となり第5病日に造影CTにて咽後膿瘍が疑われ抗菌薬開始するが無効であった。第6病日に眼球結膜充血が出現し心エコー上冠動脈輝度上昇を認めたため川崎病と診断、ステロイド併用γグロブリン大量療法およびアスピリン経口投与で症状は改善した。

【考察】 川崎病において頚部の非化膿性リンパ節炎は主症状の一つであり、しばしば化膿性リンパ節炎との鑑別を要することがあるが、咽後膿瘍類似所見合併例の川崎病の報告は国内外で約20例報告されているのみである。通常、頚部咽後膿瘍では頚部造影CTにて膿瘍の周囲の辺縁が造影されるが、川崎病に合併する咽後膿瘍類似症例ではその膿瘍の周囲の辺縁が造影されることは少なく川崎病に特徴的な所見と報告されている。

 本症例1では報告されているように膿瘍周囲の辺縁の造影は認めなかったが、症例2では膿瘍周囲の造影所見があり一般的に報告されている川崎病に合併する咽後膿瘍類似所見と異なっており画像上咽後膿瘍との鑑別に苦慮した。川崎病ではCT画像上、咽頭後壁の液体貯留や浮腫様変化で咽後膿瘍と類似する所見を認めるため、臨床症状・検査所見などから咽後膿瘍か否かを十分に吟味し適切な治療を選択する必要があると考えられた。

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PⅠ-22 川崎病それともMacrophage Activation Syndrome:診断に苦慮した1例

A case of incomplete Kawasaki disease with Macrophage Activation Syndrome

1)北里大学医学部小児科、2)北里大学メディカルセンター小児科

〇扇原 義人1)、江波戸 孝輔1)、永盛 裕佳子1)、緒方 昌平1)、坂東 由紀2)、石井 正浩1)

【背景】 川崎病(KD)におけるMacrophage Activation Syndrome(MAS)の移行は稀であるが高い致死率のため早期診断、治療が重要となる。今回、不全型川崎病様症状を呈し、著明な高フェリチン血症などのMAS様の病態を来した1女児例を経験した。

【症例】 5歳女児。発熱9日間、発疹、口唇発赤、頸部リンパ節腫脹4/6症状のため第9病日、前医で不全型川崎病と診断され免疫グロブリン(IVIG)を施行されたが解熱を認めず、12病日当院転院となった。同日追加IVIGを施行し、一旦は37度台まで解熱したが18病日より再発熱を認めた。経過中の脾腫、白血球(6,900/μℓ)、血小板数低下(10.2万/μℓ)、AST(136U/ℓ)、ALT(71U/ℓ)、LDH(540U/l)、D-dimer値上昇(8.23 ㎍/㎖)、フェリチン高値(9,300 ng/㎖)からMAS様の病態の合併を考えた。ステロイドパルス療法を19-21・25-27病日と2クールを行い軽快、41病日に退院となった。約2か月のステロイド内服を漸減後中止した。

 経過中に軽度の股関節痛を訴えたがMRIで異常なし、MMP-3や抗核抗体は陰性であった。骨髄検査では明らかな貪食像はなく、ガリウムシンチで異常集積を認めなかった。冠動脈壁エコー輝度の上昇を認めたが、明らかな冠動脈病変は認めなかった。

【考察】 MASの診断基準を満たさないものの、IVIGによりMASに対する部分的な治療がなされた可能性や、病態の初期を捉えた可能性が考えられた。微細な変化であっても検査値の変動や高フェリチン血症を合併したKDはMAS合併やsJIAなどの鑑別疾患を考慮し早期に治療戦略を図ることが必要である。

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会長要望演題 これは川崎病か? 2 ]

座長:聖マリア病院小児循環器内科 家村 素史

PⅠ-23 マイコプラズマ感染症の経過中に川崎病を発症し、便からYersinia enterocoliticaが検出された症例

Rare association of atypical peumonia, Kawasaki disease and Yersinia enterocolitis in a 7 year old child

黒部市民病院 小児科

〇篠崎 健太郎

 症例は、7歳男児。入院5日前から発熱し、しだいに咳が目立つようになった。周囲でマイコプラズマ肺炎が流行しており、本児の家族も順にマイコプラズマに罹患していた。前医でミノマイシンが処方されたが、高熱が続き、当科へ紹介入院。身体所見、諸検査所見は、マイコプラズマ感染症に矛盾しないものであった。入院後も高熱が続き、眼球結膜の充血、イチゴ舌が現れ、その後の経過からも川崎病と診断せざるを得ず、入院5日目にIVIGを行った。

 一方、ちょうど川崎病の症状が出始めた入院2日目、腹痛と下痢を認めたため、便培養を提出していた。IVIG施行後に、その便培養でYersinia enterocoliticaが検出されたことが判明した。感染源は不明であり、川崎病との関係も明らかでない。

 今回、川崎病に、マイコプラズマ肺炎が先行し、エルシニア腸炎が重複した症例を経験したので、文献的考察を交えて報告したい。

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PⅠ-24 急性膵炎症状で発症し、診断に苦慮した川崎病の一例

A case of Kawasaki disease complicated with acute pancreatitis.

都立墨東病院 小児科

〇原 朋子

【はじめに】 川崎病でみられる消化器症状として、胆嚢腫大や麻痺性イレウスが挙げられるが、急性膵炎を合併することは稀である。今回、急性膵炎を合併し、診断に苦慮した川崎病の一例を経験したため報告する。

【症例】 8歳女児。5日間続く発熱、嘔吐、上腹部痛を主訴に前医を受診し、血液検査から急性膵炎を疑われ紹介入院した。入院時の血液検査では、トランスアミナーゼ値、膵酵素の上昇を認めた。腹部造影CTでは、軽度の膵腫大と腹水貯留を認めた。以上から急性膵炎と診断し、絶飲食とした上で、Ulinastain, H2 blockerの投与を開始し経過観察を行った。入院翌日(第6病日)、発熱が続き、腹痛も改善を認めなかった。両側眼球結膜の充血を認め、また、同日の心エコーにて冠動脈の拡張は認めなかったが心嚢液貯留を認めた事、当院受診前に一過性に発疹を認めていたことから、川崎病を疑い同日よりIVIG 2g/㎏を施行した。第7病日には速やかに解熱し、腹部症状も改善を認めた。その後、第12病日に手指の膜様落屑を認め、川崎病と診断した。最終的には冠動脈は拡張所見を呈した。また、急性膵炎の精査目的にMRCPを施行したが、膵胆道系の異常を認めなかった。以上より、今回の急性膵炎は川崎病に起因するものと考えた。

【結語】 稀ではあるが、川崎病に急性膵炎を合併することがある。急性膵炎例の診療においては、川崎病も念頭におき、疑われた際には機を逸せずにIVIGを施行することが重要であると考えた。

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PⅠ-25 不全型症状のまま巨大冠動脈瘤を呈し遠隔期に左前下降枝閉塞をきたした川崎病の1例

A patient of incomplete Kawasaki disease with giant aneurism and coronary events

静岡県立こども病院 循環器科

〇佐藤 慶介、石垣 瑞彦、芳本 潤、金 成海、満下 紀恵、新居 正基、小野 安生

【症例】 5歳女児、4か月時に持続する発熱のため当院紹介となった。感染症が否定しえず抗生剤投与が行われていたが、解熱せず川崎病の除外診断のための心臓エコー検査で巨大冠動脈瘤があり、川崎病と診断された。γグロブリンとアスピリンの投与が開始され炎症は鎮静化したが、入院経過中に壁在血栓を認めたため、ヘパリン持続点滴とワーファリン内服も行い、退縮を確認し退院となった。以後外来経過観察となったが、1歳9か月時の心臓エコー検査にて左前下降枝の冠動脈瘤内に血栓様エコーを認めたため、心臓カテーテル検査を行ったところ左前下降枝の完全閉塞と側副血行路の発達を認めた。現在5歳となるが、その後の冠血管イベントはなく経過している。

【まとめ】 主要症状の発現が乏しい川崎病症例は診断が困難であるのみならず、冠動脈病変などの合併症が診断契機になる例が少なくない。冠動脈病変は冠動脈閉塞など冠血管イベントを引き起こしうるが、不全型川崎病症例での心筋梗塞発症例の報告は少ない。しかしながら、冠動脈閉塞など冠血管イベントの危険性は存在するため慎重な観察が望まれる。

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PⅠ-26 完全大血管転位症Jatene術後に難治性下痢症とともに発症した川崎病の乳児例

A case of Kawasaki disease with intractable diarrhea after the arterial switch operation

1)聖マリア病院 小児循環器内科、2)久留米大学小児科

〇家村 素史1)、籠手田 雄介1)、寺町 陽三2)、岸本 慎太郎2)、伊藤 晋一2)、工藤 嘉公2)、 山川 留美2)、前野 泰樹2)、須田 憲治2)、松石 豊次郎2)

 完全大血管転位症の術後は冠動脈の評価が困難であり、冠動脈の付け替えによる遠隔期の冠動脈障害の報告が散見されている。今回完全大血管転位症Jatene術後に乳児難治性下痢症とともに発症した川崎病乳児例を経験したので報告する。症例は在胎38週5日2,940gにて出生の男児。チアノーゼを主訴に入院。完全大血管転移症の診断にて、日齢5にJatene術を施行した。術後心機能低下、尿量低下のため腹膜透析や膜型人工肺(V-A ECMO)開始し、日齢9に離脱した。日齢12より母乳注入開始したところ、乳白色の腹水出現し乳糜腹水と診断、MCTミルクに変更し改善した。その後、頭部MRI検査にて脳静脈洞血栓症を認め、ヘパリン投与、ワーファリン内服にて血栓は著しく縮小し、内服を併用しつつ日齢55に退院となった。

 日齢70前後より嘔吐、下痢、活気低下を認め、日齢73に重症脱水にて再度入院となった。下痢は緑色水様で、体重の約10%位がでている状況であったため、大量輸液と抗生剤投与にて加療を開始したが症状の改善を認めず、微熱も認めていた。日齢76には眼球結膜の充血、手足の暗赤色変化、口唇紅潮、発熱等の川崎病症状が出現し、CRPは17.1まで上昇したため、IVIG療法を施行、IVIG投与後より、徐々に症状消失。投与後48時間でCRPは4.7まで低下した。症状の改善後も下痢は残存し、蛋白漏出性胃腸症発症の可能性もあり、MCTミルクへ変更、ステロイドパルス療法、ステロイド内服にて加療し、徐々に下痢の量は減少、日齢102に軽快退院となった。冠動脈所見はJatene術後のため評価困難であったが、評価可能な範囲内での冠動脈異常を認めていない、今後CTおよびカテーテル検査にて精査予定である。

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