川崎富作先生は小児科の半沢直樹だ

三浦 大
Masaru Miura

東京都立小児総合医療センター 
副院長 
日本川崎病学会 運営委員

Tokyo Metropolitan Children's Medical Center
Vice President

私が今日の立場にあるのは、偏に川崎富作先生のおかげです。御逝去された川崎先生に御礼申し上げたく追悼文をしたためます。

慶應義塾大学病院で初期研修を始めた35年前、教授回診で川崎病の病名を出すと怒られたものです。大学からも同様の症例の報告があり、疾患の独立性を巡って論争があったのでしょう。日本小児科学会東京都地方会で、東京大学の教授から病気の存在を否定されたという話は、川崎先生がよく記されています。
一介の若手医師 vs. 学会の頂点に立つ教授という構図は、いま話題の「半沢直樹」のようです。川崎病の重要性を広めるため一般向けに書いた「川崎病-増え続ける謎の小児疾患」(弘文堂)では、発見のくだりを池井戸潤先生の小説風にしました。
川崎先生の反骨精神の格好良さが、少しでも伝わっていれば幸いです。

私は30歳代に川崎病の臨床研究をライフワークと定め、学会などで独学しました。拙い発表にも温かい御言葉をいただいた川崎先生への御恩は一生忘れません。
ここ10年間は、小林徹先生や故・佐地勉先生とともに、免疫グロブリン不応例の対策に努めてきました。色々と批判も受けましたが、川崎先生をお手本に乗り越えてきました。第39回日本川崎病学会を主催した際に、御臨席が叶わなかったことは残念で、川崎先生の写真入りホルダーを記念品としました。

私も晩年を迎えますが、川崎病による冠動脈瘤を減らし、虚血性心疾患を起こさない臨床研究を進め、川崎先生からのご恩に倍返ししたいと思います。川崎先生、天国から見守っていてください。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

Dr. Kawasaki in photos

学会での写真(2010年頃)
川崎病の一般書
第39回日本川崎病学会記念品

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