60年前の患者です The First Patient

山添俊一
Shunichi Yamazoe

1961年1月5日。この日初めて川崎先生の診察を受けました。記憶はございません。年末に、ご近所と集合写真を撮りました。その時、両親に震えながら、寒いよと言いました。父が大人用のマフラーでぐるぐる巻きにしたところで記憶は切れています。ひと月後、先生があの満面の笑顔で、俊一君良かったねとおっしゃって頂き、退院しました。この笑顔を、今から60年ほど前とは言え、鮮明に覚えています。もっとも、その後お会いする時は、いつもあの笑顔でした。ご自宅によく遊びに行った時、結婚式に来ていただいた時、カナダ駐在中に当方の自宅にお泊まりいただいた時、まだ小さい頃の2人の娘にお会いいただいた時、箱根の学会にお供したとき、京都の学会にお供したとき。川崎病のことは、本を読んで学びました。大変なご苦労をされたことと思います。私自身は先生の治療で今日に至っているのですが、実は、あの笑顔で励まされていると思っています。子供のとき、社会人になったとき、結婚したとき、親になったとき、仕事が忙しくなったとき、そしてもう間もなく年金生活になる今と。節目になると、あの笑顔で励まされて来ました。勉強頑張ろう。社会人として頑張ろう。親として頑張ろう。仕事頑張ろう。人として頑張ろう。そして、健康であろう。もうお写真でしかあの笑顔を拝見できないのは残念に思います。ですが、先生のお陰で、精一杯健全に生きていけます。ありがとうございました。

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